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1話
「むつさん、宮前さんコーヒーはいりましたから、座ってくださいよ。俺は疲れました」
お盆にコーヒーを乗せてやってきた祐斗は、やや強張ったような動きでテーブルにマグカップを置いていく。
「もしかして、祐斗君もむつに付き合って筋トレしてたのか?」
「はい…むつさん、身体が暖まったからって更に負荷をかけるとか言って…本当、ついていけませんよ」
「あぁ…体育会系だから、あんなでも」
「雪じゃなかったら走りに行くのにとか言ってましたから…暇潰しに軽くストレッチする程度のはずだったんですけどね」
「うーん…あいつは何を目指してるんだ?」
「俺が知るわけないじゃないですか。素のうち、むきむきになるんじゃないですかね」
「大丈夫だろ。あいつは基本的に3日坊主だ。まぁ…冷えやすいからな、暖まって身体が動きやすくなったから楽しくなったってのは、分からなくはない」
「俺は分かりたくないっすよ」
「そのうち分かってくる」
疲れきった祐斗の顔を見ながら、西原はくすくすと笑っていた。




