6話
「湯野ちゃん言ってたろ?管狐は、主無しのようなもんだって…だから、扱うのも難しいのかもなって」
「あ、言ってたね。でも、いつも一緒に居るし…主従関係じゃなくて、対等な関係なのかしら?」
「………」
山上が黙ってビールに口をつけると、むつも真似するように烏龍茶を飲んだ。すでにぬるくなってきているが、冷たい物よりはましだった。
「何か知ってるんだ?ねーあたしと祐斗は颯介さんとの付き合いって社長より短いの。それに色々聞いてもはぐからされたりしててさ…」
「お前は知りたがりだからな」
「だって、自分と違う能力持ってたら知りたくなるもん。滅多に出会わないんだし」
「…だから、祐斗がアルバイトで入った頃は、根掘り葉掘り聞いてたのか?親切心で話しかけてたんじゃなくて」
「知りたいのもあった。でも、何よりも自分より年下の子が来て嬉しかったの。学校とか前の職場には後輩とか居ても、能力の事を知ってたのは菜々と先輩だけ。能力の事も分かってくれる後輩だって思ったらさ。それも一緒に仕事出来るって分かったら…仲良くもなりたかったし」
「お前の知りたがりのおかげで、祐斗はすぐに打ち解けてくれたみたいで、今でも辞めずに居てくれてるからいいか」
颯介の話から自分の入った頃の事、むつがどう思ってくれていたのかを知った祐斗は、嬉しさと気恥ずかしさで、黙ってビールを呑むしか出来なかった。