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1話
肩や髪についた雪を払いながら、冬四郎と西原はよろず屋の事務所の前までやってくると、ドアをノックした。中から返事はなかったが、ドアを開けて顔を出したのは一緒に居ると聞いていた祐斗だった。
「あ、宮前さん、西原さん。この天気の中すみません…むつさん、ちょっと…あれなんですけど…」
しどろもどろな祐斗の対応に、冬四郎はさっと目を細めた。やはり何かがあったのかと、西原もやや険しい表情をしている。
「とりあえず中に、すぐコーヒー淹れますから。むつさん、奥に居ますので」
「そうか…ありがとう。失礼させてもらうよ」
冬四郎と西原が中に入ると、祐斗はすぐにコーヒーを淹れる為にキッチンに向かった。その後ろ姿を見ながら、冬四郎と西原は言われるがままに、奥に入っていった。
「む、つ…?」
慣れた様子で奥へと入った冬四郎は、声をかけようとして驚いたような顔をして立ち止まった。西原もつられて立ち止まると、冬四郎の視線を追った。




