1話
「あ、ありがとうございます。でも聞くって…誰に聞くんすか?社長っすか?休みだし、出ないと思いますよ?」
マグカップを受け取った祐斗は、むつが携帯を耳に当ててるのを見ながら、今頃山上はパチンコにでも出ているんじゃないかと思っていた。だか、むつは聞き耳持たずなようだった。
「あ、もしもし?今いい?あ、仕事?…あ、そ。なら良かった。あのね、聞きたい事があるの。暇なら来てよ…えー?雪だよ、雪!!寒いしお迎えに来てってば…うん、祐斗も一緒なの。うん、うん…ん、じゃあ待ってるね。はーい」
電話の相手は誰だったのかは分からないが、微かに聞こえてきた声からして男のようだった。
「誰に掛けたんすか?」
「お兄様」
「…どのお兄様ですか?」
「四男の。なぁに?祐斗もうちの長男は苦手?」
「苦手じゃないっすけど…だって、うちの社長より凄い人じゃないっすか…偉いさん来ると何か…」
「そうかぁ?別に偉くはないと思うけど。あ、先輩も一緒に来るって。何か、仕事の事で休みなのに会ってたらしいよ」
「あの2人は仲良しっすよね」
「相思相愛だから」
「宮前さんが聞いたら怒るやつです」
そう?と首を傾げたむつは、そんな事はもうどうでもよくなったのか、マグカップをテーブルに置くと再びストレッチを始めていた。




