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4話
ぽちょんっと最後の濃い一滴まで注ぎ、むつは西原の前に湯飲みを置いた。青いような、濃い香りに西原は笑みを浮かべていた。
「…ありがとう」
「どういたしまして。まだ起きるには早いし、一眠りする?その間に、ご飯の支度しておくけど」
「起きてる。目も覚めたしな」
ふぅふぅとしながら、お茶を飲むとまだ体温の低い身体が、ゆっくりと暖まってくる気がした。何も立ったまま飲まなくてもいいものを、2人は寄り添うように立ったままお茶をすすっていた。
「…むつ」
湯飲みを置いた西原がむつの名前を呼ぶと、むつは首を傾げるようにして西原を見た。
「…俺、前よりもむつの事好きかも」
「………」
寝起きでそんな話をされるとは思いもしなかったむつは、まばたきを繰り返した。言われた事から意味を理解するまでに、時間がかかっているのは寝起きだからという理由なのだろうか。