4話
「気長に待ってくれるか?うちの娘はなにぶん、口下手なもんでな。にしてもなぁ…珍しく雪が積もって、むつも珍しく変な事を言い出して」
「変な事、ですか?」
「あぁ…俺は聞きたくなかった。むつの趣味の悪さが…あー…恥ずかしかったしな」
「…何を聞いたんですか?」
「…それは言えねぇ。本人に聞け。やだやだ…俺は嫌だ、認めたくねぇなぁ。晃が聞いたら、怒り狂って泣きわめくな」
どんな話を聞いたんだと、ますます気になった。だが、山上が言わないと言うのであれば、山上の口から聞ける事はないだろう。
「寝るぞ、お前は明日仕事だろ?寝ろ」
「そうします…おやすみなさい」
「ん、おやすみ」
布団をかぶった山上は、こちらに背中を向けた。もう見張らないのかと分かった西原は、布団に潜り込むとむつの方に身を寄せた。
「…なぁに?」
「あ、悪い…起こしたか?」
「んー…」
もにょもにょと何か言いながら、むつは布団を引き上げて頭まですっぽり隠した。そして、西原の胸元に顔を押し付けるようにして、再び寝息を立て始めた。西原はむつの頭の下に腕を通して、しっかりと抱き寄せてから目を閉じた。だが、嬉しくてなかなか寝付けなかった。