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1話
「むつさんでも怖いんすか?」
「怖いわよ。先輩のがちな顔なんて、滅多に見る事無いもん余計にさ」
「俺もほとんど見た事ないっす。練習の時も、わりと余裕こいてますから…ちょっと悔しいっす」
悔しいと言うのは本気でそう思っているのだろうか、祐斗の顔が少し険しくなっている。それを横目に、むつはふぅんと言うと、にやっと笑った。
「練習あるのみだわ。祐斗は始めたばっかりだもん。まだまだ負けるばっかで居て」
「嫌っすよ」
祐斗がきっぱりと言うと、むつはくっと笑った。
「あっそ?じゃあ祐斗、とりあえず背中合わせに。何か背中痛い引っ張って」
くるっと背中を見せたむつに、祐斗は自分の背中をぴったりとくっつけた。そして、腕を組むと少し膝を落としてむつを持ち上げた。完全に力を抜いているむつは、祐斗の背中に乗せられて、気持ちいいと言っていた。