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4話
焼おにぎりに満足したのか、半分も食べると管狐はむつの膝の上で丸くなっていた。
「さっき、よその管狐が来てたのに、湯野さんの管狐は出てきませんでしたね。やっぱり悪意なかったって事ですか?」
「颯介さんに対しての害がないなら、出てはこないのかもね」
「そんなに湯野さんが大好きなのか?」
管狐が残した焼おにぎりをかじりながら、むつは首を傾げた。だが、颯介を気絶させた山上に対しての怒りからしたら、そうなるのかもしれない。
「…じゃないかな?分かんない。管狐がどのくらい颯介さんを好きかは…気持ちって数字でも言葉でも言い表せない物だしね」
「それもそうだな」
「分かった事は、管狐はご飯は好きでも焼いてあるのは好まないって事ですね」
「祐斗…よく気付いたね。そうなの、これ中身だけないのよ…こだわりかしらね?」
「食は生き物の基本だからな。こだわりがあって当然だ。でも、俺は外側好きだぞ」
西原はむつの手を取って、残された外側の焼かれた部分をかじった。ほんのりと醤油がついていて、こうばしく焼けていて美味しいと満足げだった。