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4話
「ほらね。ちゃんと祐斗が誰かも分かってる。こっちが颯介さんの子…で、颯介さんは?まだ起きない?」
むつが聞くと、管狐は首を上下させて頷いた。むつは頷き返すと、管狐の小さな額を指先で撫でた。すると、管狐はその手から離れて、むつの指に頬を押し付けた。ちりっとした痛みを感じ、むつは先程噛まれた事を思い出した。
「…噛まれちゃったの。管狐はそんな事しないのにね。あっちのは悪いやつだ」
「俺は湯野ちゃんのに噛まれたぞ?」
山上が言うと、管狐はちらっと山上を見たがすぐに、ぷいっと顔を背けた。どうやら、山上に対しての怒りはまだ収まってはいないようだ。
「うちに居る間は仲良くしてね。さ、管狐は少し食べる?あたしたちは夕飯済ませちゃったけど」
すぐにむつの方を見た管狐は、大きく頷いている。それに、期待をこめたようなきらきらした目をしていた。
「…確かに、湯野ちゃんの管狐だ」
「ですね。ご飯時のあの顔は…」
山上と祐斗は、食べ物があると知った時の喜ぶ顔を見て、今いるのが颯介の管狐だと確信できたようだった。