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4話
「逃げられちゃったわね」
やれやれとむつが溜め息を漏らすと、西原が苦笑いを浮かべた。山上も呆れたような顔をするばかりだ。祐斗だけが、逃がした事を気にするように、うなだれている。
「…本気で捕まえとく気もなかったくせによく言うよ」
「バレてた?」
「山上さんも本気じゃなかったんですよね?」
「まぁな」
「そ、そうなんですか?」
「…管狐は霊獣だよ?無理無理。管狐ってね、主人の願望の為に動くのよ。どんな所にだって入り込むし、抜け出せる。だから、あの子も何かしら目的があって来たんだろうけど、悪い事するつもりなさそうだったもん」
「そうだな。アホっぽい顔してたしな」
「アホっぽい顔って…」
「ぶっさいくって言ったやつよりマシだ。でも、むつはよく分かったな。尻尾が違うって…どう違うんだ?」
「えー?知らないの?本当にもう…」