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4話
はっきりしない管狐に、むつも首を傾げていた。だが、ややあってから寝室の方を見た。何やら悩むかのように、管狐と寝室を見比べた。
「…颯介さんの子じゃないわね?どこから来たの?主は誰なの?何で…うちに来たの?」
最後の質問には、警戒心が含まれていたのか、むつの声は低くなっていた。管狐は、そんなむつを怖がったのか、するっと手から抜け出して寝室の方へと向かった。だが、むつの動きは素早い。
掬い上げるようにして管狐を捕まえると、逃がさないように首の辺りを掴んだ。
「あなたねぇ…人の家に勝手に上がり込んだあげくに女の子の寝室に入ろうなんて、非常識にも程があるんじゃないの?躾がなってないわね。それとも、飼い主は常識知らずかしら?」
じろりと管狐を睨んだむつは、不機嫌なのを隠そうともしていない。何も知らない人からすれば、小さな動物を苛めるかのようにも見えるが、管狐は基本的には主人の願望の為に動く霊獣だ。ここに来たのも、寝室に向かおうとするのも、この管狐の主人の願望からなのだろう。