4話
ことことと鍋の中で、肉や野菜が煮えるいい匂いがしてくると、祐斗の腹がくるくると鳴った。空き缶を片付け、新しいビールを持ってきていたむつは、それに気付いて、くすくすと笑った。
「お腹空いちゃったんだ?ごめんね、もう少し待ってて…ってもね、ろくな物なかったからカレーなんだけど…」
「でも俺カレー好きですよ。西原さんじゃないけど…ラッキーかもっす…」
「本当?なら良かった」
むつが再びキッチンに戻っていくと、祐斗はカレーが出来上がるのが楽しみなようで、キッチンの方を見ていた。
「むつのカレーか…」
「あれ?西原さんはカレー嫌いっすか?」
「いや…好きだよ。好きだけど、何が入ってるか分からない時があるからな」
「………?」
「前にな、茹で落花生入ってたんだ。うまかったけどな…俺はカレーの具材に変化球求めてないからさ」
「…他には何が入ってたんだ?」
「でも、後は…ゴーヤ?だいたいは根菜類多いっすね。蓮根、大根、南瓜、薩摩芋…さっき、ろくな物ないって言ってましたから…ちょっと警戒しちゃいますよ」
「ゴーヤ…俺ゴーヤ苦手なんですよね」
「俺はカレーに南瓜、薩摩芋は嫌だ」
祐斗と山上はキッチンを見た。さっきは、楽しみで見ていた祐斗だったが、今となってはどんな物が出てくるのかと気が気ではなかった。