4話
諦めきれないんだな、と山上は思った。それがそのまま、口をついて出そうだったが、コーヒーと一緒に飲み込んだ。
「あたしね…初恋ってお兄ちゃんだと思うの。でも、会う事なくなって、そのうち何も思わなくなっててさ。大学で先輩と会って…まぁ…ほぼ一目惚れっていうかさ…」
「えぇ‼まじか…まじか…まじか!?」
むつの口から一目惚れ、ましてやこんなタイミングで恋話を聞かされる事になるとは思わなかった山上は、ううむと唸った。珍しく雪が続いていると、こんな事になるのかと、真面目に思う程だった。
「うん…今まで何人も付き合ったけど、自分から好きになったのってお兄ちゃん以外では初めてなの」
「…あ、そういえば言ってたな。ちゃんと付き合ったのは西原が初めてでって。晃と寺に行った時に」
「そうなの…好きになったのもだし…」
もにょもにょと何やら語尾を濁したむつは、コーヒーをすすって恥ずかしそうにしている。本当に恥ずかしいのか、耳まで赤くしている。珍しい反応まで見せられ、山上まで恥ずかしくなっていた。
「お前…コーヒーで酔ったか?」
真剣に山上が言うと、むつも真剣な顔をして頷いた。