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3話
「祐斗、悪いけどコーヒーいれてきてくれる?ちょっと薄めにして…」
「あ、はい。西原さんも飲みますか?」
「あぁ、頼むよ」
祐斗がじぶんの使っていたマグカップも含めて、3人分のマグカップを持って立つと、当たり前のように西原はむつの隣に座った。西原はタバコに手を伸ばしながら、むつと小さな声で呼んだ。
「…聞かれてないか気になったのか?」
「うん…確証もないのにって先輩言ってたし。聞かれてたらどうしよって…それにね、妖と人が一緒に居るから、厄介な事になるのかなとかって考えたら…不安になっちゃってさ」
「考えすぎだ、むつが妖なら片車輪みたいに本来の姿ってあるんだろ?それはどうした?それに、山上さんだってある意味…むつよりも人間離れしてるだろ?」
「…それもそうね。ごめんね」
「ありがとう、のが嬉しいけど?」
「…ありがとう」
ちらっと西原の方を見たむつの目が、水分を含んで揺れているように見える事に気付いた西原は、そっとむつの手を握り締めた。
「やっぱ邪魔なのが多すぎるな…」
はぁと西原が言うと、むつはすくっと笑った。