3話
「そんな状況だったのか?」
「ん…動けなかった。風も雪も酷くなってたから。無理矢理動いたら、氷柱が飛んできたの…でね、刺さりそうになってて、その時に助けて貰ったの」
「…向こうは仕事か?」
「うん。様子見だけだって言ってた…今は何もしないって言ってた。だから…たぶん、追ってもないんじゃないかなって思いたい」
「お前の願望はいい」
山上にきっぱりと言われると、むつは少し悲しそうな顔をした。だが、言われている事はもっともだ。冷めてきたカフェオレを飲んだむつは、タバコの煙を見詰めた。
「うん…そうね。結論から言うと、妖なのは分かったけど、正体までは分からなかった」
「何も見れなかったのか?」
「見たよ…ちかが鈴を振ってくれたら、雪も風も止んだから。見たのは、女の子だった…その子が妖だったんだと思う。それで、その子が倒れたらどっかに隠れてた人が出てきて、女の子を引きずって居なくなった」
「…妖の女の子って言うけどちゃんと見たのか?」
「分かんない…遠目で見てただけだし。でも、ほっそりしてて小柄で髪の毛長いから女の子かなって…後から出てきた方は性別は分かんない。ただ、女の子よりは背高かった」
「…で、あいつは何か言ってたか?」