140/1090
3話
「…湯野さんって、そんなに秘密主義なのか?」
「…知らなーい」
ぷいっとそっぽを向いたむつは、甘ったるいカフェオレをすすった。ソファーに座っていたが、足の方は大丈夫になったのか、床に降りると西原のタバコを掴んだ。何も言わずに1本取り出すと、あぁと低い唸り声と共に煙を吐き出した。
「むつ、拗ねる前にお前は話だ。何があって、何を見てきたんだ?何で、あの男が居たんだ?」
「うーん…」
あの男という言葉を聞き、祐斗と西原は首を傾げた。むつはソファーの近くに置いてあるコートに、ちらっと視線を向けた。祐斗はむつの視線を見逃さずに、コートを見た。少し天井の方を向いて、何かを思い出すように考えていた。
「あっ‼もしかして…?」
「せーかーいっ」
「…本当ですか?」
「うん、ちかに会ったよ。鈴を使ってくれたから、あの場を逃れられたのかな…」