3話
「…じゃあ、見掛けたのって今日の話ですか?こんな天気の中、西原さん休みなのに出歩いて…」
「いや、一昨々日だな。たぶん…昨日、写真見てから、あれって思ってな…何かな、女の子を追い掛けてたんだ。もめてるっていうか、女の子の方は無視してるって感じだったけど、男の子を方が一生懸命って感じでさ。だから、記憶に残ってたんだ」
「…言わなかったってわけじゃないのね」
「いや、まぁ…ちょっと悩んだ。弟さん未成年だろ。それが中学生くらいの子と一緒にってなるとな…未成年同士で、こんな方まで出てきて…」
「電話でもそれ言ってたわね。颯介さんの地元って…どこ?」
実家がどこなのかさえ知らないと、むつは祐斗の方を見た。だが、祐斗も知らないようで、ゆるゆると首を振って山上を見た。山上は何も言わず、むしろ少し驚いたように、目を見開いていた。
「…知らないのか?」
「知らないわよ。聞いてもさ、颯介さんって何も教えてくれなかったもん…」
「あぁ…そっか。湯野ちゃんは、むつよりも秘密主義だもんな…まぁ、言いたくないのかもな。本人が、そうなら俺も言えないな」
むつと祐斗は顔を見合わせた。やはり、山上は颯介の事を少しは知っているようだ。だが、結局は教えて貰えない。2人とも、だんだんと不機嫌そうな顔つきとなっていった。