3話
「はぁ…とりあえずコーヒーいれるね」
疲れた様子のむつは、キッチンに入っていくと電気ポットのスイッチを押した。とりあえず颯介は寝かせたし、帰ってきたという安心感からか、むつは足の力が抜けていくのを感じていた。
「あ、むつさん…」
祐斗が気付いた時には、むつは見えなくなっていた。リビングからでは、対面式になっているキッチンの中までは見えない。祐斗が覗きに行くと、シンクに指をかけるようにして、へたりこんでいるむつが居た。
「…おいおい、むつまで…大丈夫か?」
様子を見に来た山上は、むつの側でしゃがみこんで顔を見ている。むつは顔を上げたものの、立ち上がる事が出来ない。
「立てないか?」
「うん…足の力抜けちゃった」
「ったくもう…本当にどいつもこいつも」
悪態をつきつつ、山上は軽々とむつを持ち上げた。そして、ソファーに連れていくと、壊れ物でも扱うかのように、そうっと座らせた。
「あ、ありがと…」
「…コーヒー勝手にいれるぞ?あと灰皿だな…えーっと、どこだ?むつの部屋は引っ越しの時以来だからな。どこに何があんのか、さっぱりだ。西原、おーい来てくれ」
「はいはい」