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3話
車内は暖房も効いているからか、むつはうとうととしていた。だが、がちゃっと音がして少し車が、揺れるとはっとして目を覚ました。フロントガラス越しに、山上が歩いていくのが見える。という事は、祐斗と西原が来たのだろう。むつも慌てて車から降りると、山上を追い掛けた。
ドアの開け閉めと足音に気付いた山上は、立ち止まってむつを待っていた。
「…寒いんだから、乗ってたらいいだろ?」
「あ…でも…」
「勝手に開けたりしねぇよ」
「そんな事は心配してないわよ」
山上は少しだけ目を細めて笑うと、やってきた西原に向かって手を上げた。西原は、会釈をしてやってきた。
「むつさん、鞄持ってきましたよ」
「ありがと。鞄持ち歩かないとダメね…」
「………?」
「何で、山上さんもむつも車の中に?部屋知ってますよ?」
「むつが鍵を鞄に入れてるんだ」
「…そういう事ですか」
「ごめんなさい…」
「まぁいいさ。西原、手貸してくれるか?湯野ちゃんを部屋まで運ぶのに、むつじゃダメだしな」
「…それも…そういう事ですか」