3話
コーヒーを入れ直すと言い、祐斗は西原の使っているマグカップも持ってキッチンに入った。電気ポットでは、ついさっきたっぷりとお湯を沸かしたはずが、もう半分も残ってはいない。落ち着かないからと、コーヒーばかりを飲みすぎているのかもしれない。
少し薄めに作ろうと、インスタントの粉をマグカップを入れていると、事務机に置いてあった携帯が、けたたましい音で鳴り出した。祐斗は、ティースプーンを投げ出して、キッチンを出た。すると、こちらに来ようとしていたのか、西原とぶつかりそうになった。
「…ちょっと落ち着けよ。ほら。気になる、むつさんからのお電話だ」
「す、すみません…はい、谷代ですっ‼」
落ち着けと言われたばかりなのに、気負ってか勢いよく出た祐斗は、電話越しに、ふっと笑う気配を感じた。
『分かってるわよ。だから、掛けてるの…ね、もう先輩来た?』
「あ、はい…来てます。むつさんはまだ戻れそうにないですか?」
『うん…ちょっと問題発生。先輩と代わって』
「…代わるように言われました」
問題が発生なのに、自分ではなく西原に伝えるのかと祐斗は不満そうな顔をした。だが、嫌とは言えずに西原に携帯を渡した。