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3話
ふらついた女が、雪の上に倒れこんだ。
ちかげの鈴の威力がありすぎたのか、むつはどうしてもそちらに行き、様子を確かめたかった。無理矢理、口を塞いでいる手を振り払い、ちかげを引きずってでも動こうとしたむつを、ちかげは難なく引き寄せた。
ぼすっとちかげの腕の中に収まってしまったむつは、苛立たしげにちかげを睨んだ。
「待て、まだだ」
「…どういう事なの?」
「いいから見てろ…ほら、来たぞ」
まだ何か現れる物が使うあるのかと、むつはじっと目を凝らして見ていた。すると、建物の影から人が出てきた。こちらも、女と同じくほっそりとしているが、やや背は高いようだった。
むつは目を細めて、じっと見ていたが出てきた人が、男なのか女なのかの区別はつけられなかった。