115/1090
3話
ちりん、ちりん。鈴の音は、鳴るたびに大きくなっていく。むつはもう、強い風も飛んでくる物も気になどならず、ただ鈴の音に耳を澄ませるばかりだった。
ちりん、ちりん。鈴の音が大きくなるにつれ、風が弱まってきた。そう感じたむつは、抱いていた狐を地面に下ろした。
もう風で街路樹が、揺れる事も軋む事もない。事態はゆっくりと終息に向かっている。
ちかげの事だから、何か手荒な真似でもするのかと思ったが、そうではない。むつは、ほっとしたように街路樹の影から出た。そして、ちかげの側へと寄った。ちかげは、むつがやってくると、ちらっと視線を動かした。むつはその視線を追うように、風が吹き付けてきていた方を見た。だが、まだ完全に止んではいない風で、雪が舞い上がっていて視界が悪く何が見えるわけでもない。