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3話
街路樹から出たのは、ちかげだったが、攻撃はむつが居る街路樹に向けられている。どう見ても、むつが狙いとしか思えない。
「くうっ‼」
むつはネロを抱き寄せて、強く吹く風とそれに伴って飛んでくる物に耐えていた。ついさっきまでは、大きな物だったが、今は細かな物のようだった。それは街路樹に、びしびしと当たっている。その音からして、かなりの勢いだ。
「むつ様、もう少し耐えて…ちかげ様なら、何とかしてくださいますから‼」
「ずいぶん…信頼関係があるのね?」
「産まれた時から、お側におりますので…」
「成る程…だから、あたしの所においでって言っても来なかったわけね。ちょっと…妬けるかも」
ふっと苦笑いを浮かべたむつは、吹雪の中を立っているちかげを見た。むつは自分が、囮に使われたような気もしたが、ちかげが何とかすると言うなら、そうしてくれるだろう。それを信じて、見ているしかなかった。