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3話
「…どうやって?それに、このまんまにしておいたら、危ないんじゃないの?」
逃げれるのであれば、とっくに逃げ切っているのではないかと、むつが首を傾げた。
「………」
ちかげは、口を開いて何か言いかけたが、迷うように閉じた。その様子をネロが、見てみぬふりをしている。2人の様子が、どことなくおかしい事にむつは目を細めたが、今はそれをとやかく言う場合ではない。
「ちかげ様…長引いては…」
「あぁ、仕方ない。俺もろくに手持ちがないからな。何とか落ち着かせて、一旦退くしかないな」
長引くとどうなるのか、どうやらむつが知らない事をちかげもネロもよく知っているかのようだった。
同じ様な仕事をしているからか、むつは何がどうなっているのか聞きたいと思った。だが、聞いた所で教えてくれるはずもない。むつとちかげでは、やり方が全然違うからだ。
「むつ、ネロとそこを動くなよ。すぐに済ませる…危害は加えないから、安心して、良い子で待ってろ」
ちかげはそう言うと、街路樹からさっと出た。