3話
「おい、そろそろ仕事するぞ」
「はい。ですが…ちかげ様が悪いのですよ?むつ様に嘘ばっかりおつきになられて…数々の非礼、主に代わって謝罪申し上げます。本当に申し訳ありません」
「おい…」
「ネロがしっかりしてるから、成り立つのね。いい、パートナーじゃないの」
「お前らな…」
むつとネロが顔を見合わせて、くすくすと笑い合っていると、名前をしっかりばらされたちかげは、深々と溜め息を漏らした。
「いい加減にしろよ?そろそろ真面目に…」
「分かってる。向こうの道はって言ってたけど…向こうってどこ?」
「あ、はい。この建物の向こう側…越えた方の道の事でございます。吹雪いてはおりますが、ここのように酷くはございません。何か狙いがあっての、この状況かと思います」
「あぁ、むつが狙われてるみたいだ」
「…むつ様、何かなさいましたか?」
「何もしてないわよ」
「だとさ。何もしてないのに、狙うとなると…何か相手側に理由があるんだろうな」
「もしくは、むつ様じゃなくても人なら何でもいいか、という可能性も」
「有り得る。とにかく、俺は手ぶらだし、むつも本調子じゃないからな。一先ず退くぞ」