3話
「騒ぐなと言っただろうが…」
「…嘘つき」
「はぁ?」
「狐さんは、ちかげって呼んでた」
じろっとむつが睨むと、ちかは気まずそうに、顔を伏せた。そして、むんずと狐を掴むとむつに押し付けた。乱暴なようだが、狐は痛がる事はない。意外と手つきは優しかったのかもしれない。
「…むつ様?むつ様は以前、主を女の子のような、あだ名で呼ばれてましたよね?二文字の。むつ様のお名前も二文字ですし。ですから、二文字の方が良いのかもと悩まれて、ちかと名乗られたんですよ。悪気はありませんから。どうにも…考えが浅いようで、申し訳ありません」
「どんな字?」
「字は…御座いません。と、いうより分かりません。与えられた名ですから。あ、私の名前はネロですので、よろしくお願いします」
「ネロ?外人さんみたいね」
「えぇ、でもいいんです。ちかげ様がくださったんですよ。鈴の音色が綺麗ですねって言ったら、ねいろのいを取って、ネロにしようと言ってくださって」
「そう、なんだ…意外な時に意外な事を知ったわ。ふむ…雪の日も悪くないかも」
「かもしれませんね。私もこうして、またむつ様とお会いできて、嬉しいです‼」