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3話
「薄着で出歩くんじゃない」
「…あっ‼」
ぎゅっと目を閉じていたむつだったが、聞き慣れた声にぱっと目を開けた。そこには、黒い服で全身を包んでいる男が居た。
滑り込むようにして、街路樹に隠れた男は、どさっとむつを下ろした。再び尻を打ったむつは、痛いと泣きそうな声を出したが、それどころではない。
「なっ…何してんの‼また監視!?」
「そんな訳ないだろ。仕事だ…妖が人を狙っているのが分かったからな。出てきたら、お前だったんだ。本当に…厄介事が好きだな」
「んなわけあるかっ‼」
「それだけ、喚けるなら無事か。良かった」
そっと頬を撫でられたむつは、そこに痛みを感じて顔をしかめた。男は、さっと着ていた服を脱ぐとむつの肩にかけて着させた。