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3話
完全に自分に狙いを定めている。そう思ったむつだが、足元が滑って立ち上がる事が出来ずに逃げ切れない。足すれすれに、指先すれすれに、とがつんっがつんっと刺さっていく物がある。
これを仕掛けてくるのは、何者なのか。むつはそれだけでも確認がしたかった。だが、視界の悪さでそれは叶わない。飛んでくる物が、一ヶ所ならなのだけは分かっている。その先に何が居るのか。それが分からずに、むつは悔しそうに唇を噛んだ。だが、顔を下げたりはしない。それをすれば、負けを認めた事になるのだから。
そう思って、気丈に顔を上げていた。
「…っ‼」
もう悪戯に、かすらせる事をするのは辞めたのか、気付いた時には尖った物が、すぐ目の前に迫ってきていた。
避ける事は出来ないと、むつはぎゅっと目を閉じた。だが、それがどこかに当たる事はなかった。それどころか、ふわっと身体が浮いたような感じがした。