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3話
「あっ…っ‼」
風が吹いてくる方に顔を向け、後ろ向きに避けていたが、足元にまで気をつけていなかった。何度も踏まれた雪が固く、凍っていたようでむつはそれに足を取られて滑った。
べちんっと尻もちをついて倒れたが、手をついてすぐに立とうとした。だが、転んだ事に慌てたせいか、むつはなかなか立てない。じたばたしている間に、むつの足の間に、がつんっと刺さった物がある。
悲鳴を上げる事も出来ずに、むつはそれを見ていた。そんなむつを嘲笑うかのように、びゅうびゅうと風が鳴っている。
流石のむつも余裕は全くない。立ち上がれないなりに、ずるずると滑るようにして後退していく。だが、相手側からの攻撃の手が緩むはずはない。それどころか、なぶるかのように身体には当てずに、かすらせるようにして、びしびしと当たる物がある。