101/1090
3話
「あぁ…寒い、寒い」
むつは足踏みをしていたが、じっとここに居るわけにはいかない。風邪でも引けば、山上からの小言は降ってくるし、待たせている祐斗にも西原からも、何を言われるか分かったものじゃない。それに、颯介を送り届けるだけと出てきたのだ。戻らなければ、祐斗の心配も増すばかりだろう。
雪は好きだが、暖かい所が1番。甘やかされている現代人で結構と、むつは街路樹に隠れているのを辞めた。
ぱっと飛び出すと、強い風の中、鋭く尖った物がむつ目掛けて飛んできた。風が強いせいか、身動きを取るには風に逆らわないのが得策だ。むつは後退しつつ、持ち上げた腕でせめて少しだけ、視界だけでも確保しようとしていた。だが、大した効果はない。
鋭く飛んでくる物を避けてはいても、それは数が多い。やはり街路樹から出ない方が良かったかもしれないと、後悔していた。