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はじまり
風呂場には、自分の着替えもタオルも用意されていて颯介は、脱いだコートと黒い詰め襟の制服をそのままに、もうもうと湯気のデテイル風呂に足を入れた。だが、熱すぎたのかすぐに引っ込めた。
「…身体が冷えきってるのかな?それとも、あの女の厭がらせかな?」
颯介が呟くと、肩に乗っていた管狐は首を傾げた。そして、先に湯の中に入っていった。
「お前が平気って事は、身体が冷えきってるって事か。先にシャワー浴びるか」
きゅっきゅっとシャワーを出して、颯介はぬるいお湯を頭からかぶった。指先と足先が、じんじんしていて、感覚がないような気がする。だが、颯介は慣れているのか、そんな手でわしわしと髪の毛と身体を洗うと、ゆっくりとお湯の中に入った。
「あぁ、疲れた…管狐、お疲れ様。お前が居てくれたから、本当に助かったよ」
暖まった手で、管狐の小さな頭を撫でてやると、管狐は心地良さそうに目を閉じた。そして、すいすいと泳いでくると、颯介の肩に上った。
「卒業まであと少し…か」
颯介はそう呟くと、両手ですくったお湯でばしゃばしゃと顔を洗った。