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はじまり
「なぎ?なぎ、どこだい?」
灰色の雲からは、白い雪がはらはらと落ちてきている。地面はすっかりおおいつくされ、辺りは一面真っ白になっている。そんな中を背の高い男は、きょろきょろとしながら歩いていく。
余程の距離を歩いてきたのか、手にしている傘からは、どさっと雪が落ちた。はぁと息をついた男は、首に巻いていたマフラーを少しゆるめた。暑いのか、首元はうっすらと汗ばんでいる。マフラーをゆるめて、コートのボタンを1つ外すと、中に来ている詰め襟のボタンも外した。
「まったく…どこまで行ったんだ?こんなに雪が積もってるのに」
男はずぼっと足を持ち上げた。膝下くらいにまで積もっているからか、1歩を踏み出すのも簡単な事ではない。長靴をはいて出てきたが、中にまで入った雪で足先は、じんじんと痛むような冷たさになっていた。だが、それでも男は辺りを見ながら歩いていく。
「なーぎーっ‼なぎ、どこだ?」