2-60.ダンジョン演習 終了
気まぐれトーカ!
「そろそろ第三層に続く階段が見えそうだな…」
Sクラスのアレク、ランバートとAクラスのクラウス、キルシェ、ポルトの五人チームが順調にダンジョンを攻略して進む。前衛は大剣使いのランバートと盾持ち剣士のクラウスの二人、中衛として万能型のアレクと小回りの利く小柄な少年ポルト、後衛に魔法使いのキルシェの隊列で進んでいく。
パーティはそれぞれ役割を持って行われる。
今回の即席パーティでアレクが考えたそれぞれの役割は簡単だ。
前衛の出来るランバートとクラウスの二人で魔物と交戦し、その間に後衛のキルシェが魔法をぶっ放して魔物を倒す。前衛が交戦中に他の魔物と遭遇があった場合は、ポルトが引き付け迎撃に当たり、アレクが状況に応じた判断を下す戦術だ。戦術会議をじっくりと練ることが出来なかったため、それぞれ単純明快で分かりやすい役割をそれぞれに与えることで戦況の混乱を防いでいた。
「……! 右角から魔物が来るぞ! 数は三体だ!」
索敵探知で魔物の気配を探っていたアレクが前衛の二人に声を掛ける。
「————ッ‼(ごくんっ)」
「———シャッ‼」
クラウスが顔をこわばらせているのに対し、ランバートは獰猛な笑みを浮かべる。まるで魔物と出会うことが嬉しくてたまらないと言った具合だ。いつからあんなに好戦的な奴になったんだ?
上層なので、強い魔力反応を持つ魔物はまず居ない。
三層辺りで一番厄介な魔物は初心者殺しと言われるキラーアントくらいだ。大きな顎を持つ巨大な蟻の魔物で、瀕死になると仲間に危険を知らせるフェロモンを出し、大量に仲間を呼び寄せる厄介な魔物だ。
しかし、感じたのはキラーアントの魔力より弱い魔力反応だ。おそらく外見がうさぎに似ているキラーラビットか。強靭な脚力を持って居り、すばしっこい魔物だが、ランバート一人で楽勝だろう。
アレクが指示した角を曲がると、アレクの指示通り魔物が居た。
白色の体毛に覆われたもふもふした外見だが、外見に似つかわしくない屈強な後ろ脚を持つ兎型の魔物。間違いなくキラーラビットだ。キラーラビットの肉は筋っぽくて喰えたものじゃないが、毛皮は高級衣類などに使われるため、それなりの高値で取引される。
「…うしっ! 俺がまず切り込むぜぇえ!!」
ランバートが勢いよく飛び出す。それにつられて「ま、待ってくれ!」とクラウスもキラーラビットに斬りかかる。それを見てアレクは頭を抱えていた。連携の「れ」の字もない行動に呆れを感じていた。
「あぁ! またランバートさんが突っ込んだ! どうしましょうアレクさん!」
「大丈夫だろう…。 問題ないだろうからな…」
協調性や連携を見る試験なら一発不合格だろうけど、とは口に出さなかった。ポルト自身も理解しているだろうから。はじめは連携重視で攻略していたが、ここは上層で相手が雑魚ばかりで張り合いがまったくない魔物たちしかいなかった。
始めは連携を重視していたランバートも何度も何度も雑魚との連携プレイの中で「やってられるかぁ!」と一人で斬り込むようになってしまった。それにつられてクラウスも飛び出していく。何度も何度も見たこの光景にアレクもポルトも後衛のキルシェでさえも呆れを通り越して、無へと変わっていた。アレクだけはパーティリーダーとしての責任からくる一抹の不安からこの光景を見るたびに頭痛に襲われていた。
前衛のランバートとクラウスによってあっという間に殲滅された。
本来なら、毛皮をとりたいところだが、今は演習中なので死体が邪魔にならないように壁の端に寄せて先を急ぐ。ほおっておいてもダンジョンの掃除屋であるスライムが勝手に消化してくれるだろう。
魔物を倒し終わった後、すぐ近くにあった三層へと続く階段を下りて目的のセレナ先生がいる三層へと到達した。この階層のどこかに居るセレナ先生から紙を貰ってそれをジョナ先生に届ければ今回の演習はクリアだ。
「おい、アレク」とランバートが話しかけてくるが、内容はすぐに察した。「あぁ」と素っ気無く返事を返してすぐに脳内地図で生体反応を感知する。どうやらセレナ先生は四層に続く階段前に居るようだ。
俺たちと同じ第一陣で出発したパーティは全部で四チーム。
そのうち三層へと到達しているのは俺たちだけだった。まぁまだ演習が開始して十分もたっていないから当然だが、かなりハイペースな攻略をしている。まぁそのほとんどがアレクの的確な指示と道案内と、現れる敵を瞬殺するランバートの活躍のせいだが…。
そんなこんなで圧倒言う間にセレナ先生の場所へと到達する。
「あら…随分とお早い到着ね!感心するわ。 じゃコレ! コレを持って入口に居るジョナ先生に渡せばクリアだから」
セレナ先生から一枚の紙を渡される。そこには俺たちパーティメンバーの名前と到達までの時間が記載されていた。どうやらコレが一か月後に迫った昇級試験に向けての何かしらの材料になるんだろう。
セレナ先生から渡された紙を受け取ったアレクたちは元来た道を戻って一層に居るジョナ先生の元へと戻った。結果は堂々の一位。かかった時間はわずかニ十分足らずで演習を終えたのだった。
その後、遅れてアイリスのチームが二番目に戻ってきた。
「アレクさんたち随分と早かったですね! タイムはどのくらいでしたの?」
「ニ十分くらいだ。 まぁ三層往復ならこれくらいだろう」
「…それ絶対ランバートさんがやらかした結果ですね。」
「よくわかってらっしゃる。」
アレクとアイリスの謎のシンパシーで通じ合っていた。それを聞いていたランバートが「はぁ!?」と必死に言い訳を始める。それを聞いてアレクが言い返し、ランバートと口喧嘩をはじめ、アイリスがそれを見てクスクスを笑っていた。
それを遠目で見るアレク・アイリスのパーティメンバーだった生徒たちは「アレクさんたち全員おかしいよね?」と話だし、それぞれ自分のチームで起きたことを話し合い始めた。
先生が「いつまでくっちゃべってんだ! 早く反省シート書いて提出しろぉ!」と怒鳴られるまで続いた。こうして俺たちの初めてのダンジョン演習は幕を閉じたのだった。
————それから一か月
順調にダンジョン演習を終え、ついに半年に一度の昇級試験が始まる。
就職試験の結果が昨日届きました…
結果は不合格…
見事に落とされました…
また一から就活のやり直しだ…




