8.転生の準備
気まぐれトーカ。
「ほっほっほ! 礼はいらんよ!湿っぽいのは苦手なもんでな。」
朱莉が何不自由なく暮らせるところに転生したことを知れただけで
俺は十分嬉しかったけど、少し淋しい気がするな。
さて、創造神様が言う通り俺も湿っぽいのは嫌いなので
気持ちを切り替えていきますか! さぁがんばるぞ!異世界!
「どうやら気持ちの落としどころは見つけたようじゃな。
さて!さっそくじゃが転生の前準備を始めることにするぞ!」
「よろしくお願いします!創造神様!」
「まずじゃが… 幸樹くんが転生する世界についてミスラから聞いておるのか?」
「はい。人種や国の特色や魔法について少し教えていただきました!」
「ふむ… ではわしのほうからも少し補足説明をしておこうかのぉ~
わしが創造した世界『ファビニール』の世界はわしを含めた四柱の神々で管理しておる。
世界を創造した創造神ファビニール
世界を生き抜くための武力を司る武神アレス
世界を生き抜くための知恵を司る知神アテナ
世界を生き抜くための魔導を司る魔導神エウリュア
の以上四柱で世界を管理したり人々を見守っておるのじゃよ。
そのわしら四柱は基本的に何もせず、世界を見守るのが仕事じゃから
地球でいう所の“神の助け”とかは期待するではないぞ?
さて、話はそれたがこの異世界には『ステイタス』と言う概念が存在しておる。
我々四柱が地上を生きる生物たち全員に与えておる力じゃ。
『ステイタス』は俗にいうそのものを示す身分証のようなものだと考えてくれ。
ステイタスは人は当然、魔物も持って居るから進化した魔物が知恵を持ち
自らに名を付けて『固有名持ち』となり、さらに強く進化することもあるのじゃ。」
「……ゲームみたいなものかな?」
「その認識であっておる。さて、そろそろ転生の準備を始めるかのぉ~
転生する上で何か望むことはあるかの?」
異世界転生定番のチートを貰う?
いや、くれるなら嬉しいけど… それもなぁ~
これから朱莉が生きている世界にいくんだ。確か朱莉は今7歳だっけ?俺が転生すると0歳スタートってことだよな?なんか朱莉のこと「お姉ちゃん!」って呼びたくないな…まぁ呼ぶことは一生ないだろうけど、精神衛生上朱莉の年下ってのはちょっと嫌だな… 高校に入学するまでずっと幼馴染で過ごしてきた仲だし…。
悩んだ結果、俺が望むことは…
「転生した朱莉と同じ年に生まれ変わることはできませんか?」
朱莉が転生して七年。現在の朱莉の年齢は7歳のはずだ。俺も七歳児として転生したい。朱莉をお姉ちゃんとは呼びたくないし。なんとなくだけど、ちょっとでも対等でいたいと思う。
「……ほんとにそれでいいのか?その…チートが欲しいとか、永遠の命がほしいとか…もっと欲のある望みを言ってくると思っとったのじゃが…?」
「恥ずかしながら、ほとんど俺の我儘です。朱莉の年下っていうのは…ちょっと嫌だったので」
「ほっほっほ!変わっておるのぉ… まぁわかったのじゃ!」
創造神様はどこか微笑ましい表情をしていた。片手で女神ミスラ様と同じ半透明のウィンドを呼び出し操作する。「これがええかのぉ?」とつぶやくと同時に僕の目の前に魔法陣が現れた。
目の前に現れた魔法陣の輝きが一層輝く。
あまりのまぶしさに光を手で防ぎながら、見守っていると魔法陣から何かが出てくる。
そして目を開けてられないくらい眩しくなり、目を瞑る。
だんだんと光が収まり、目を開けるとさっきまで魔法陣があった場所に一人の白髪の少年が横たわっていた。
◇◇◇
さっきまで魔法陣があった場所に魔法陣が消え、代わりに白髪の少年が一人横たわっていた。
だけど、俺はその横たわる少年にある違和感を覚えたのだ。
あまりにも顔がカッコよかったからとかじゃなく、ただその姿が異常だったのだ。
本来ならあるべき場所にあるはずのものが失っていたのだ。
横たわっている少年には左腕と下半身がなかったのだった。