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2-45.決着を転じて戦友となる

気まぐれトーカ!


※2019/5/20 加筆執筆しました!

元2000字くらいの量でしたが、約7000字まで加筆しました。


バチッとする音と共にアレクの目の前に現れる。


「うぉりゃあぁあっ‼」


気迫のこもった声と共に、凄まじく強烈な雷を纏った斬撃をトールが繰り出す。

アレクはその斬撃を、半身になって躱した。


そのままトールとの距離を取る。


(あぶなかった…っ)


あまりにもトールの変貌が凄かったため、一瞬反応が遅れてしまった。


「ハァハァ… この斬撃を、躱す…な、んて… さすがっ… だね」


ゼェゼェハァハァと荒い息をしながら、トールがアレクに話しかけてくる。誰が見ても解るほど、トールは恐ろしく疲弊していた。


「…その姿の維持には、精神をめちゃめちゃ削られるようだな。」


「あぁ、そうだよ… 僕も、まだ…この、魔剣… つかい、こなせて…いないんだよ」


「分かってるのか? その力は一時の加速装置(ブースター)みたいなものだ。自滅必死だぞ?」


アレクはトールの余りにも酷い疲弊具合から、ある程度の推測を立てていた。


そもそも『古の魔剣』は制限や契約などのもろもろの条件が多いが、すべてパスできたのなら絶大な力を与えてくれる武器だが、その分必ずといっていいほどなにかしらの()()を支払わされる仕組みになっている。その代償は魔剣それぞれ違う者なので、トールの魔剣の代償は分からないが… 長くトールにあの魔剣を使わせるわけにはいかないことだけは、分かっている。


「自滅必死、か… そんな、ことは… わかっている! それでも僕は… 全力で()()()と戦いたいんだっ!」


「……どうやら、これ以上の心配は無意味だな。 ならトール… お前の最大の最強の一撃を撃ってこい! それで決着を付けようじゃないか!」


アレクの言葉の真意にトールはすぐに気が付いた。

正直、トールはこの形態をもう一分も維持できない。それほどまでに疲労が蓄積されていた。それを見抜いての一撃で決着を付けようとアレクは言っているのだと。


(…本当に、君は何者なんだよ…? 理不尽な勝負を挑まれて尚、僕の身を心配してくれる君は…)


「あぁ… 望むところだ!」


トールがバチッと音を残して一瞬で闘技場端へと移動する。

音を置き去りにしたその速度は、まさに光速といっても刺し違えない速度(スピード)だ。



距離を取ったトールは手に持っている魔剣《雷霆ケラウノス》に今注げる全魔力を注ぎ込む。魔剣に纏っていた黒い雷がさらに大きくバチバチバチィイッと膨れ上がる。


全身全霊の一撃―――――――――最後の一振りだ。


(ふっ… あはは… あはははははっ‼ やばい…っ 凄く楽しいっ!)


口端が上がるのが止められない。

勝手に顔が笑顔になる。

満身創痍で既に気力も体力もほとんど残っていないのに…


どうしようもなく――――――――楽しいっ!


死力を振り絞って戦うのが―――――楽しいっ!

自分の敵わない相手と戦うのが――――――楽しいっ!

全力を出せる相手と戦えるのが――――――楽しいっ!



あぁ――――――――全力を出せるのが、こんなに楽しいなんて…っ‼



(これが… 本当の『戦い』って奴なんだ… すごく… すごく楽しいよっ!)



トールの纏うどす黒い魔力がまだ一段と濃くなった。

それをみた観客席にいる生徒たちやジョナ先生がざわめき立つ。

しかし闘技場にいる二人は物静かだった。



(…すごい力だ…。 魔剣の力をさらに()()()()()か…っ‼)


アレクは凄まじく濃密な魔力を纏い、放っているトールに対して冷静に分析を進める。


あの魔剣は意思を持っている。


つまり魔剣が認めた相手のみに力を与える類の魔剣だ。いままでのトールは強すぎる魔剣の力に制御(セーブ)を掛けていたのだろう。そのため、魔剣はトール自身を所有者として認めていたが、いつまでも力を開放しない所有者に対して、そっぽ向いていたんだろう。


しかし、今のトールは無意識かは分からないが、魔剣の力をセーブしようとしていない。そのため、魔剣はトールに力を分け隔てなく与えることが出来ているんだ。


この力を自在に制御・操作(コントロール)できるようになったら… トールは間違いなく王国最強の一角に育つだろう。今の状態なら、もしかしたらアクアリアよりも強いかもしれないな…。



お前みたいな奴が朱莉の傍にいてくれるなら、俺はもう――――――――――――




アレクはゆったりとした動きだが、その身からは凄まじい気迫が満ち溢れていた。

アレクの持つ武器から、蒼い雷がバチバチィッとはじけ飛ぶ。やがて、その蒼い雷はさらに濃密な魔力をを纏い、放つ輝きは紫色の雷へと変化していく。


「………」


「………」


二人の間にもはや言葉は必要なかった。


それぞれの譲れない大切な物


譲れない想いや誇り…男として、(オス)としての本能


『漢の勝負』


ほぼ同時に二人がそれぞれの武器を頭上に振り上げる構えを取った。



「「———————うぉおおお゛お゛オ゛オ゛オ゛っ‼」」



二人は同時に走り出す。



「—————————【黒雷霆轟(セイブルドゥンデル)雷天裂斬(・スラシュナイダー)】っ‼」


「—————————【紫電(しでん)建御雷神(タケミカヅチ)】ッ‼」



漆黒の雷を纏った斬撃と紫色に輝く雷を纏った斬撃が闘技場の中心でぶつかり合う。



凄まじい轟音と雷同士のぶつかり合い。



アレクとトールのお互いの斬撃は拮抗したかのように見えたが


――――――――勝負は一瞬でついた。





ガギィ―――――――――――――――――――――ンッ‼





「……ッ‼ ちく、しょ……勝ちたかった…な…」


トールの纏っていた魔力が消失し――――――――――ゆっくりと後ろに倒れ込んだ。



トールの魔剣《雷霆ケラウノス》がアレクの魔刀:笹雪に弾き飛ばされてしまった。


トールの胸には大きな太刀傷が出来ていた。アレクの斬撃はトールの魔剣を弾き飛ばし、トールの躰を纏っていた《雷霆羽衣鎧(ケラウノス・ドレス)》をも斬り裂いた。


静寂が訓練場を包み込む中、アレクがトールに声を掛ける。



「NICE FIGHT‼ いい勝負だったな、トール」


静寂に包まれた訓練場にアレクの短く発せられた声はよく響いた。


その瞬間、観客席の静寂は消し飛び、ドッと観客席の生徒たちが沸き上がった。


「す、すごすぎるよ… あの二人…っ!?」

「……ははっ…。 凄すぎて、言葉が出ないよ… なんて魔力だ」

「それより… あのアレクって奴… 本当にあの実力で七席なのか…?」

「…あ、ありえない。 アレクが…あ、あんなに…つよかったなんて…!?」


観客席に居た生徒たちはアレクの異常さに驚愕し、アレクに敗れたトールの下にはミルベリアとアクアリア、審判を買って出たランバートの三名が急いで走っていった。


「ト、トールッ‼ ねぇ大丈夫!? 大丈夫よねっ! トール…トールッ!」

「お、おい!そっとしてろ!動かすなっ! 出血してるから…えぇっと、速く止血するんだ!」

「動かさないでっ! 私は治癒魔法使えるからっ!すぐ直すわ!」


トールの下にいち早く到着したミルベリアはトールの肩を持ってぐわんぐわんと揺らし、必死に叫んでいる。その光景にランバートとアクアリアが急いで静止を入れる。ランバートがトールにしがみつくミルベリアを引き剥がし、アクアリアが治癒魔法をトールに施していた。


「…傷は浅く斬ったから問題ない、と思うよ」


トールに治癒魔法を施しているアクアリアの下にアレクが歩いて向かう。

トールの下に着くと、ミルベリアがキッと俺を睨んでくる。なんで睨んでくるのか分からないが… とりあえずトールの容態が危険な状態だ。


「…確かに外傷は問題ありませんけど……」


治癒魔法を施しているアクアリアの表情がこわばる。どうやら治癒魔法を施しているときに気づいたようだ。


「ちょ、ちょっとリアっ! ど、どういうことですか!? トールの… トールの容体はどうなのですか!?」


言い淀んでいるアクアリアにミルベリアが喰いかかる。言いづらそうなアクアリアに変わり俺が代わりに説明をする。


「…問題は魔力の枯渇だな。 魔剣の力を開放したんだ。いい方は悪いが未熟なトールが扱うには強大すぎる魔力を魔剣から引き出したことによる反動と魔力を使いすぎた『魔力枯渇状態』 それも重度、のな」


「ど、どういうことなのですか! 魔力枯渇なら、私も何度もなったことがありますわよっ! そ、それが… どうして問題なのですかっ!?」


「規模が違う。 普通の魔力枯渇なら確かに問題はないよ。だけど、トールの場合はほとんどの魔力を使い切ってしまっている。それも()()()()に必要な魔力までも消費してしまっているんだ」


「…っ!? そ、それって… ま、まさか――――――」


「このままだと、トールは死ぬね」


「「!!!!!!!!!」」


ミルベリアの頭によぎった言葉をアレクがズバッと口に出す。


ミルベリアとランバートがバッとトールの方を見る。トールの顔は青褪めており、まるで生気を感じられない。アクアリアの治癒魔法で出血していた胸部の外傷は治っていたが、トールの容態は悪化の一途をたどっていた。


「ね、ねぇ… リア… と、トールは… 大丈夫ですわよね…?」


必死に治癒魔法を施しているアクアリアにミルベリアが恐る恐る聞く。しかし、アクアリアからは返事がないどころが、明かに顔色が悪かった。


その表情を見たミルベリアがバッと後ろを振り返りアレクの胸倉をつかむ。


「ッッ‼‼ ……………ぅ……っ……ッッ‼」


ミルベリアがアレクの胸倉を掴んだが、そのまま何かを言うわけでもなく、ただ葛藤していた。そのまま何を言わずにアレクの胸元から手を放す。


彼女自身は気づいているのだ、アレクには非が無いことを。 


この模擬戦を挑んだのはトール

そしてジョナ先生の静止を振り切って勝負続行を望んだのもトール

扱え切れない危険な魔剣を開放して勝手に死にかけているのはトール自身だと… 


彼女は理解しているだ。


だけど、それでも目の前にいるトールと戦った俺のことがどうしても赦せないんだ、我慢できなかったんだろう。この言いようのない怒りをぶつけないと気が済まなかったのだ。 そんな状況なのに、ミルベリアは言いとどまったんだ。 


(まったく、よくできた人だよ。 その葛藤を理不尽だと知りながらも、相手にぶつけたらどれだけ楽になれるか分かっているはずのに、それをしないで思いとどまるなんて、ね…)


アレクは目の前で未だ涙目で葛藤している少女(ミルベリア)の横を通り過ぎて、必死にトールの命を救わんとばかりに治癒魔法を施しているアクアリアの横にしゃがみこむ。


「アクアリア殿下、この症状には治癒魔法は無力ですよ」


「…え?」


「治癒魔法はあくまで身体の傷を治すだけであって、毒や麻痺などの身体の状態異常などを治療(なお)す力はないんだよ。 魔力枯渇状態は身体の状態異常に含まれる症状だから、治癒魔法での治療では、現状維持程度の効力しか望めないんだ」


「そ、それじゃ…どうすれば…っ」


「あとは俺に任せてください。俺が必ず直し(助け)ます」


必死に治癒魔法を掛けていたアクアリアに優しく語り掛けるようにアレクが話しかけ説明する。そして、トールの治療を変わる。トールの容態は思ってた以上に深刻で、身体に蓄積されている魔力総量のそのほとんどをさきほどの模擬戦で使い切ってしまっているようだ。


本来であれば、この重度の魔力枯渇状態に陥ることは絶対にない。必ず生存本能という名のリミッターが働いて、限界以上の力の制御を本能的に行うはずだ。しかし、今のトールの状態は明らかに人としての生存本能(リミッター)を破壊して、限界を超えた魔力を使ったとしか考えられない。これは推測だが…おそらく、魔剣の力によってこじ開けられ、限界を超えた力を出すことが出来たのだろう。


以前にも、同じくアレクとの戦いで魔力枯渇状態に陥った奴が居たが、そいつは生存本能(リミッター)が正常に働き、生命活動に必要最低限の魔力は必ず残っていた。しかし、トールの場合はその生命活動に必要な魔力まで使われているため、一刻を争う重体だ。


魔力枯渇状態の治療には基本的には自然治癒しかないと言われている。そもそも、ここまで重度の魔力枯渇状態に陥ることすら、まずありえないからである。しかし、今のトールに自然治癒を待つ余裕はない。ならば、治療法は一つしかない。


それは自身の魔力をトールに流し込むのだ。


しかし、この方法は難しく、おそろしく危険なのだ。いうなれば、血液の輸血のようなものなのだ。この世界の生物はみんな大気中に存在する自然の魔素を体内に吸収し、魔力を生成する。そのため、一人一人違った魔力質になるのだ。


そのため魔力の受け渡しは必ずまったくの同質、または近い魔力質の者からしか不可能なのだ。だからこそ、魔力枯渇状態の回復には本人の自然治癒力に任せられるものなのだ。



アレクはトールの左胸に右手を置く。


魔力が生成される場所は全生物共通で心臓付近で生成されるのだ。


トールの左胸に右手を置いてトールの魔力質を感じ取る。


どうやら思ってた通り、同じ風系統の魔法を使う同士、俺とトールの魔力質は似ている。これなら俺とトールの魔力の受け渡しは可能だ!


俺は身体の中で新しく生成した魔力をトールの胸に置いた右手からゆっくりとトールの中へと流していく。ゆっくりと少しづつ、確実に流していく。一度にドバドバっと流して万が一、拒絶反応が出てしまったらトールは間違いなく死んでしまう。 


焦る気持ちを抑えながら、ひたすらゆっくり、慎重に流していく。


ゆっくり、ゆっくりと… 慎重に… 


「お、おぉ…っ‼」

「っ! す、すごい…」


さきほどまで死相が見えるほど衰弱し青褪めていたトールの表情が段々とよくなってきた。その光景をみたランバートとアクアリアが吃驚したように声を上げる。


「…うっ…う、うぅ……っ」


「…ッ! ト、トールっ‼」


アレクの迅速な治療により、トールが意識を取り戻した。意識が戻ったトールにミルベリアが飛びつく。


「おわっ! み、ミル!?ぼ ど、どうしたんだい…そんな大胆に…!?」


突然飛び掛かってきたミルベリアにトールの朦朧とした意識が覚醒する。


「トール!本当によかった!よかったですわ! あ、あんなに無茶して… ほ、本当に心配したんですからね!」


「あ、あぁ… もしかして…僕、やばかった…?」


「ほんとうに! それは、ほんとうにすごく危なかったんですわ! リアと…そ、そのアレク…さんが必死に治療してくださらなかったら… ほんとうに危なかったんですからね、トール!」


ミルベリアが涙目になって、トールをぽかぽかと殴る。それをトールが必死にまぁまぁといった感じでなだめる。 なんだこの甘い空間は… 砂糖を吐きそうになるよ。


やがて落ち着きを取り戻したミルベリアがトールから離れ、トールがゆっくりと立ち上がる。


「…真剣勝負に負けた上に、命まで助けられるとは… 僕の完敗だよ。 本当にありがとう、アレクさん」


トールが御礼の言葉を言ってくる。その言葉に無図痒さに悶えるアレク。


「なんか、ガチンコ(真剣勝負)で戦った後に『さん付け』されると無図痒いわ! 普通にアレクで構わないよ。同じ年だし、それに俺は平民だからな! 礼儀とか礼儀とか礼儀とか…関係ないし!」


「…なぜ礼儀を三回言ったのか分からないが… まぁそれなら僕からも。 僕のことも『トール』って普通に呼び捨てで読んでほしい。 負かされた相手から『様付け』とか『さん付け』は確かに無図痒さが走るからね」


「…そうか! よろしくな、トール!」


「あぁ!こちらこそよろしく、アレク!」


命を賭けた死闘では人の本性が出る。まさに、先ほどのアレクとトールの戦いは『死闘』 お互いがお互いの本性を知るには十分すぎる戦いであった。戦いの後にお互いを知り合った者は、戦友。まさに今のアレクとトールは戦友であり、信頼のおける親友となったのだ。


ガシッと手を掴み合うアレクとトールに微笑ましい雰囲気が訓練場を漂う。

訓練場にいる誰もが二人の先ほどの死闘に、称賛と敬意の眼差しを送り、見守る中…




「序列2位トール=フォン=ヴァーミリアンおよび、序列7位アレク! 両名を学園規則第三条:模擬戦規定違反より――――――――――――――2週間の停学処分とする!」



ジョナ先生の激昂した声が訓練場に響いた。


突然の加筆執筆ごめんなさい!次話で停学処分の流れに持っていくとあまりにも話の切りが気持ちよくないので、この話で停学処分にもっていく加筆をすることでうまく収めました(>_<)


人の感情を描くのってやっぱり難しいね。

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