2-41.誇りと願望
( *´艸`)気まぐれトーカ!
※編集しました。2019/05/13 20:33
「器量、実力共に生徒会執行部にふさわしい人材だと思い、生徒会長である私含め役員満員一致を持って一年生序列7位のアレク 生徒会執行部への推薦をさせていただきます。」
昨日の定期会議の場でセシリア会長が推薦した男。
それが今、目の前で武器を構えているアレクという名の平民であった。
セシリア会長を含め、アクアリア殿下やアルフレッド殿下、トニー先輩の4名がアレクと問題児サザーンとの模擬戦を見ており、その実力・器量共にふさわしい人材だとお認めになったそうだ。
しかし僕は彼が生徒会に所属することが納得できなかったと同時に、心の底から湧き上がるワクワクと胸が高鳴る感情に囚われた。
生徒会執行部への推薦には生徒会に所属する生徒の過半数の同意が必要であるが、生徒会長や副会長といった役職を持っている生徒が推薦すれば、執行部所属の生徒の過半数の同意がなくとも生徒会へ加入させることが出来る。
現在の生徒会の所属メンバーは武官科11名、文官科13名の計24名で構成されており、そのうち役職を持っている生徒を『生徒会役員』と呼び、肩書のない所属生徒を『執行部』と呼ばれる。
生徒会役員 5名
生徒会執行部 19名
生徒会役員とは生徒会長や副会長のような肩書を持っている生徒のことで
『生徒会長』セシリア=フォン=アスラエル
『副会長』アルフレッド=フォン=アスラエル
『書記』バニスター=フォン=リルクヴィスト
『会計』トニー=フォン=ヒッチコック
『監事』アルメディオ=カルテット
の5名が現在の生徒会役員である。
全員が三年生の校内序列10位以内に属するSクラス生徒であり、事実上の学園トップたちだ。
その頂点であるセシリア会長が推薦し、副会長のアルフレッド殿下、会計のトニー先輩も同意。そしてアクアリア殿下までもがふさわしいとお認めになられたのだ。たしかに平民出身で序列7位とはいえ、Sクラスに所属していることが、そのことを物語っているが… たかが序列7位のアレクに生徒会を務められるほどの実力が本当にあるのか、私には納得が出来なかった。
今年の生徒会入会希望者の数はざっと40名。
そして、そのうち私を含めた7名がSクラス生徒だった。
Sクラス生徒は全員で10名もいるが3名は受けていないのだ。
その筆頭が序列7位のアレクなのだ。
『Sクラス生徒は生徒会への入会試験を必ず受けなければならない』
そんな暗黙のルールが存在している学園において、アレクをはじめとした、普段仲良くつるんでいる2人の生徒までも生徒会入会試験に顔を出すどころか、ボイコットしたのだ。
他のSクラス生徒たちは「あいつらは自分の実力をよく知っている」「「身の程をよく知っている」などと納得していた。事実そうだった。生徒会に結局入会できたのは私を含めわずか二人だけだった。あの剣聖の実の妹である自身も二つ名を持っている『妃剣帝』ミルベリア=フォン=シルヴァであっても入会することが敵わなかったのだ。
生徒会に入会できた一年生は剣と魔法、両方に優れた適正と実力を持つアクアリア殿下と僕だけだった。
しかし僕は知っているのだ。
他のクラスメイトは恐らく知らなかったであろうあの平民の本当の実力を。それは、偶然見かけたアレクと同じく平民でSクラス入りを果たしたアイリスとの模擬戦を目にしたからだ。
二人の戦いを表現するなら、まさに『激闘』
二人の見切ることの出来ないほどの剣速に、凄まじい剣戟の応酬。
納刀の構えからの見えない一撃や、でたらめな曲線を描いての剣戟。
見たことも聞いたこともないような剣術の型やフォーム。
武器は二人とも自前の木剣を使っているようだったが、あんな凄まじい剣戟速度や打ち込みに木製の武器が耐えきれるはずがない。しかし、その理由はすぐにわかった。二人は常に木剣に魔力を纏って打ちあって居たのだ。
あの眼にも止まらぬすさまじい剣戟の中でも乱れることのない魔力操作。
見事な腕前で連撃を叩き込むアイリスに、それを全て受けきっては反撃しているアレク。
そして何より、そして何より、二人の戦ってる表情を『笑顔』だった。
二人は気持ちよさそうに剣を打ち合っていたのだ。まるで全力を出し合えるのが、全力で戦えるのが楽しくて仕方がなかったような無邪気な笑みを浮かべたその戦いっぷりに。
気が付いたら、その模擬戦に見入っていたのだ。
僕の見入ってしまった二人の模擬戦は、後一撃で決着という所で乱入してきた一人の男子生徒によって模擬戦は終わってしまった。
乱入してきた男子生徒に何故か怒りを覚えた。
「よくも邪魔してくれたな!」「せっかくいいところだったのに!」と。
乱入してきた生徒目掛けてこの抑えようのない怒りをぶつけてやろうと思い、一歩踏み出した時に私は冷静になった。
どうして私はこんなに怒っているのだろう、と
そして自覚した。
私はあの戦いに見とれてしまっていた、と
すごく戦いが楽しみだった、と
そして思った。
「僕はあの二人に勝てるのか?」と
「僕はあの二人のように心の底から笑って戦えるのか」と
そんなバカはことはありえない!
この私が他人の模擬戦に見とれていただと!?
この四大公爵家の筆頭ヴァーミリアン家の次期当主である私が‼
誰よりも日々鍛錬し、技を磨き、誰よりも努力してきた私が‼
他人の戦いに見惚れるばかりか、あまつさえ「勝てないかもしれない」などと弱気になっているのか‼
トールの中にある誇り
アスラエル王国の軍事を代々担当してきた一族《ヴァーミリアン家》の次期当主としてのプライド。
四大公爵家の一つ《ヴァーミリアン家》は王族の血縁関係にある家柄であり、アスラエル王国の四大王族家の一つに数えられる名門家でもある。そして国の軍事を預かる一族でもあるのだ。この国唯一の辺境伯である《ヴァーミリオン家》は《ヴァーミリアン家》の分家にあたり、代々ヴァーミリアン家の次男三男の跡目争いに参加できない男児がヴァーミリオン家に行くのだ。
つまり、ヴァーミリアン家こそがこの国の国王から全ての軍事を一任されている家系なのだ。
その一族の嫡男として生まれ落ちたトールは、物心ついたころより剣を握り、剣術を学び、鍛え、極める。魔法を学び、鍛え、極めてきた。それもすべてはお国のためにと、力を磨いてきた。
誰にも負けないために。
誰よりも強くなるために。
だからこそ、認めたくないのだ。
この僕が、たかだか平民出身者の模擬戦に魅了されたこと、そして弱気になってしまっていることに。
認めたくない事実だった。
だか、その心の裏ではどこか別の感情が沸きつつあった。
その感情はスッキリしないモヤモヤっとしたモノではなく、どこか喉にひっかかる違和感のようなものでもない。もっと別の感情だ。
その感情の正体はすぐにわかった。
『いつかアレクと戦ってみたい』
戦闘狂、そう言われても差し支えないような感情だが、武を極めし者なら誰もが思うであろう当たり前の感情だった。ただ、単純に自分より強いかもしれない相手と全力でぶつかりたい。自分の全力を出せる相手が欲しいと願うのは必然的な感情なのだ。
アイリスはアレクという全力を出せる相手に出会えている。
相手を殺す気で戦っても、それを全て受け止めてくれる人がいる。
戦いとは戦場とは違う。
相手を殺してはいけない、模擬戦という戦いの場において絶対の法則だ。
自分が、相手がどんなに全力を出そうとも、必ずどこかで相手を殺さないようにと心理的ブレーキがかかるのだ。即ち、全力を出し切れていないのだ。
だからこそ、アイリスがうらやましく思えた。
自分も今の全力を受け止めてくれる相手が欲しい、と心のどこかで願っていたのだ。
それがこの感情の正体
自分の方が優れている、強いという証明の為なのか、将又ただの純粋な好奇心から訪れる戦意なのかは分からないが、いつの日からか…心の底から「戦いたい」「全力をぶつけたい」と強く願うようになっていた。
そして会長の突然の推薦に役員の同意。
これは覆ることのない絶対事項だ。
『アレクは生徒会執行部に所属することになる――――――――』
本当に生徒会に所属できるほどの実力があるのか?
いや、それは会長や副会長、役員の方々が認め、同意したからおそらくあるのだろう。なにより、セシリア会長やアルフレッド副会長、トニー会計やアクアリア殿下がお認めになったのだ。まず見間違えることなどはあるはずがない。それに、あの日私が見たあの模擬戦も、サザーンを圧倒的力でねじ伏せた実力も、全てがアレクの本当の力だというのなら是非とも僕もこの目で見てみたい。そして、叶うなら自分の全力を思いっきりぶつけてみたい。
しかし、これは私念の感情だ。
僕とアレクが戦う理由にはならない。
いや… あるじゃないか!
実力はあれど…本当に生徒会執行部にふさわしい人格、人徳の器量を持ち合わせた人なのかは分からない。
実力はあっても、その実力に似合う器量があるかどうかは別の話だ。生徒会役員に求められるのは「有無言わせぬ圧倒的実力」そして「全てを飲み込む大いなる器量」の二つだ。
実力はともかく、本当にふさわしい器量を持ち合わせているのか?
僕は彼を余り知らない。
それはアクアリア殿下も同じだろう。
なぜなら、彼は普段仲良しのアイリスやランバートに序列最下位のロイスという者と四人でパーティを組み、日々を切磋琢磨しあって居るのだ。私たちSクラスの生徒とも切磋琢磨することなく、自分たちで鍛え合っているのだ。
実技の授業中であっても、常に三人で行動している。
そのため、アレク、アイリス、ランバートの三人はSクラス生徒の中でも浮いた存在なのだ。
アレクの実力と器量を知るためには、どうすればいいのか…
幼少期から相手のことを知るには戦うしかないと教わってきた。
戦いの中でしか相手は本性を見せない、と習ってきた。
ならアレクの実力と器量を知るために…
――――――――—―戦うしかないじゃないか!
そう思うだけで口端が吊り上がる。
胸が高鳴る。これは喜びの感情、か。
心の底から高揚感が際限なしに湧き上がってくるようだ。
生まれて初めて戦いの愉悦を感じることが出来るかもしれない。
『生徒会にふさわしい実力と人徳があるのか剣を交えることで感じ取る』
戦うための大義名分はある。
沸き上がる高揚感に好奇心。
男としての、雄としての優劣感。
即ち、どちからが『強い』かの証明。
気が付いたら私は異空間収納からヴァーミリアン家に代々伝わる魔剣を取り出して引き抜いて、その剣の鋒をアレクに向けていた。
ニヤ家顔が止まらない。
これから起こる戦いに胸が躍る。
さぁ君の力を見せてくれ‼
僕の力を受け止めてくれ‼
そして一緒に楽しもう‼
本当の闘いって奴を‼
―—————————————僕に教えてくれ‼
「―——————————もしよかったら僕と戦ってくれないか?」
(さぁ僕と… 全力で戦ってくれっ‼)
バイトに就職活動と忙しくなってきた…。
更新速度これ以上落とすわけにはいかない…。
なら… どうすればいいんだ…!?




