6.世界の説明
異世界『ファビニール』の人種・国・魔法の説明会になります。
ミスラ様が担当の者を呼びます。と言ってから、あれから何時間たったんだろうか…
一向に現れる気配がないぞ…。
始めの数十分は、「まぁ遅れることもあるだろうーなー」「こんなくらいかかるよなぁ~」
程度で考えていたけど、これは明らかに遅すぎないか?
もうそろそろ5時間たつんじゃね?
見てみろよ… 笑顔が美しかった女神ミスラ様の目元がピクピクッって動いてるぞ…
絶対怒ってるだろ… 美人台無しレベルだな。
これは意を決して何か話をしないといけないな。女神が憤怒の化身と変わる前に…。
「あのー ミスラ様」
「はい。なんでしょうか?」
俺が話しかけると、さっきまで目元とピクピクッして怒りを抑えていたであろう顔から、
一変して普段のニコニコスマイルモードに変わった。 変わり身早!?
「えっと…
俺がこれから行く異世界『ファビニール』でしたっけ?その世界はどういう世界なんですか?」
「雪村幸樹様が希望している『ファビニール』世界は、地球でいうところの中世ヨーロッパ時代になります。俗にいう“剣と魔法のファンタジー世界”になります。科学は全くと言っていいほど発展しておらず、代わりに魔法が発達した世界になります。」
「中世ヨーロッパの時代か… 貴族様とか王族様とかいるんですか?」
「はい。存在しております。地球は人族のみですが、ファビニールの世界には様々な人種が共存しております。と、言いましてもやはり人族が一番数が多く勢力が強いですが。」
これはラノベのテンプレの獣耳っ子やエルフちゃんならぬ、エロフちゃんまでいるってことじゃね!
中学時代に読んだラノベ世界の住人たちが… これから行く世界に… ハァハァッ
「……えっと、とりあえず異世界『ファビニール』の説明をさせていただきますね。
俺の方を見ながら、(この人やっぱり少しおかしい人じゃないの?)という疑問の目を向けながら
俺がこれから行く、朱莉が生きている異世界『ファビニール』の世界について教えてもらった。
地球でいう所の中世ヨーロッパってことは階級制度が存在しており
王族 → 貴族 → 平民 → 貧民 → 奴隷
と分かれており、基本的には下の階級の者は、上の階級の者に逆らってはいけないし
何をされても基本は泣き寝入りが当たり前の世界だそうだ。
また、異世界『ファビニール』には様々な人種がいており、種族ごとにそれぞれ特徴もある。
人族 → 獣人族 → ドワーフ族 → エルフ族 → 魔族
という順番に人口が少なく、世界の国のほとんどが人族の国らしい。
『人族』はもっとも人口が多く、繁殖力に優れているが、寿命が他の種族に比べると短い。
『獣人族』は身体能力に優れた種族であり、見た目が獣の一部が入っているのが特徴。
その見た目から一部の国ではいまだに下等生物と奴隷扱いや愛玩動物として差別、迫害をされている。
『ドワーフ族』は小柄な体格に似合わず怪力に優れた種族であるが、性格がひねくれている者が多い。
エルフ族と違って民族単位で暮らしているが外界との接触を積極的に行い、発展している集落が多い。
『エルフ族』は基本的に外界との接触を禁止しており基本森から出てこない。
魔法適正はずば抜けており、寿命も1000年生きる者がいるほど長い。
それにスタイルも顔も良く、愛玩動物として奴隷にされやすい。
そのため見つけたら捕まって権力者たちのステータスとして売買され奴隷にされる。
しかし、そのなかでもエルフ族の中には外界との接触を望むものもおり、集落を飛び出して
外界に出ていくエルフもいる。外界に飛び出したエルフは“はぐれ”と言われる。
“はぐれ”となったエルフ族は人族の国で普通に生活を送ったりしているらしいが、
国の中には『人族至上主義』の国も存在し、そこは「人族以外は蛮族である」の正義の元
見つけ次第、即座に奴隷にされるらしい。
『魔族』がもっとも危ない種族だそうだ。基本的に好戦的な種族で繁殖力はそこまで高くないが、一個体で一国を相手に戦えるほど強い個体もいるらしい。魔法適正もエルフ並みに高く、身体能力も獣人族とタメを張るくらいヤバい種族。もっとも恐れられているのが種族特性の『魔物支配』であり、魔物を操ることができるヤバい能力だそうだ。
ファビニールの世界には大きく分けて『四大大国』と言われる大きな国がある。
『平和と自由の国』アスラエル王国
『軍事国家の大国』コルサエル帝国
『唯一の獣人の国』ワービスト王国
『聖職者の宗教国』ファビニール教皇国
種族差別を禁止している多民族国家のアスラエル王国
基本的に平和な国で、種族差別を禁止しているため様々な種族が暮らしている平和な国らしい。
世界統一を目指す軍事と侵略国家のコルサエル帝国
身分制度が色濃く残っており、平民以下は搾取の対象とされている。
迫害され続けた獣人族が集まり人族に対抗して作られたワービスト王国
獣人のための国であり、人族至上主義の逆の『獣人至上主義』を掲げている国らしい。
世界で唯一の宗教ファビニール教を信仰しているファビニール教皇国
コルサエル帝国より極端な『人族至上主義』であり、人族以外はすべて蛮族であり人族の奴隷と考えらている。この国には王族がおらず、教皇は大司教の中から能力が一番高いものが選ばれる。
「……現代地球人の俺には古い考えとしか、考えられない世界ですね…。」
「だから、わたくしはオススメできませんと言いました。いまからでも変えられますので、地球の輪廻転生の輪に入りませんか?」
「お断りします。次の説明をお願いしますー!」
「ハァ… わかりました。さきほど“剣と魔法のファンタジー世界”と言った通り、
この世界には魔法が存在しております。魔法を使うためには体内の魔力や外気に溢れている魔力の源である“魔素”を使って魔法を発動させます。
どうやら、この世界の住民たちの身体には必ず魔力が宿っているそうだ。
その魔力や外気に溢れている魔素を取り込むことによって魔法を発動するらしい。
基本的に魔法は『イメージ』が大切だと言われており、その魔法の発動には二つの方法がある。
一つが『詠唱』だ。
一般的に『詠唱』を工夫すれば、強い魔法が発動できる。
詠唱によりイメージをより明確的に、具体的にすることによって発動するそうだ。
二つ目に『詠唱破棄』と言われる『無詠唱』だ。
『イメージ』をしっかりしておけば、理論上は詠唱しなくても魔法が使える。
しかし、しっかりと魔法の具体的なイメージをしていないと魔法が不発に終わる。
俺的には、もうじき三十路手前のいい歳したおっさんが
「風を荒れ狂え! 風神の一撃! サイクロン・エッジ!」みたいな詠唱はしたくない。
どこぞの中二病患者さんは喜んで言うだろうが、俺にはそんな趣味はないので『無詠唱』を鍛えよう。
そうそう、この世界には基本的に二つの魔法の種類がある。
一つが『凡庸魔法』と呼ばれる一般的に誰でも使えるように簡略化された魔法だ。
俗にいう生活魔法みたいなもので、初級~上級と分類されている。
もう一つが『固有魔法』と呼ばれる、その人しか使えない自分で作る創作魔法だ。
固有魔法は自分専用の魔法と言われ、使える人は国がこぞって手に入れたくなるような人材だ。
それほどまでに、この固有魔法は神聖視されている。
「……つまり、魔法は努力すればだれでも使えるってことですか?」
「基本的にはそうですが、初歩魔法である生活魔法は例外として、他の魔法は適正が無ければ使えませんのでご注意ください。それとイメージを具現化するのが魔法の基礎となりますので、イメージトレーニングは大切です。」
「なるほど、イメージさえしっかりしてればいいんだな…。頑張りがいのある世界じゃないか!」
「確かに努力が報われやすい世界ではありますが、世界には魔物と呼ばれる生き物がいます。魔物は魔力を食らって生きています。ですので、生まれつき魔力を持って生まれてくる人類の天敵です。魔物の中にもランクが存在しており、中でも『固有名持ち』や『天災級』と言われる魔物は知能があり、人の理解をる強さを持っている個体も存在しております。」
「……会いたくないな。会ったら逃げるがベストだな。そういえばドラゴンとかもいるって聞いたけど、あれは魔物に分類されないの?」
「ドラゴンは魔物とは違い、それ一つが種族になります。知能が高く、中には人の姿に化けることが出来る個体もいます。物好きなドラゴンが人化して人族と交わり新しい種族『竜人族』もいらっしゃいますが、個体数も少なくほぼ幻に近い種族です。」
「なるほど…。そういえば異世界定番のワイヴァーンもドラゴンに属するの?」
「ワイヴァーンはドラゴン族の亜種であり、知能は獣並みしかないですが、腐ってもドラゴン族であり強敵です。」
「本当に様々なことを教えてくれてありがとうございます!ミスラ様!」
「いえいえ、これも仕事のうちになりますので。
他に分からないことなど「いやぁ~ 遅れてすまんかったのぉ~」おそいですよ!」
俺とミスラ様が正面向いて話し合っていた時に、後ろから急に話に割り込んでくる声が聴こえ
びっくりして後ろを振り返ると、そこには白髪で白いおひげを伸ばした「如何にも我は神である!」と神々しい雰囲気をまとった老人が立っていた。