2-15.終わった後の羞恥心
キィー→ まぐ↑ れ↓ トー↑ カ↓ ‼
※気まぐれトーカ‼ と書いてます。
「なにごとだっ!! って何が起きたんだこりゃあ!!」
スキンヘッドの大男が見たものは、円形の闘技場の結界外に大量に倒れ込んでいる冒険者たちの姿だった。その倒れ込んでいる冒険者たち数も驚きだが、何より驚いたのはほぼ全員が顔面から血を流して気を失っている光景に驚いた。
ここの闘技場では致死性のダメージを受けたと判断されれば外に弾かれるシステムになっている。
結界内で致死性のダメージを受けて外に弾かれた場合は、全ての被害がリセットされる魔法が付与されているのだ。しかし、外に弾かれている冒険者たちは全員が血塗れだ。
(作動していなかったのか…)と思って調べてみるが、正常に稼働していた。
つまりは正常に稼働しているのに傷を負って外に弾き出されたのだ。
この魔法がリセットしきれない以上の被害を与えたということになる。
それも死なないように絶妙な調整をされて、だ。
闘技場には三つかの姿が見える。
一人は無傷で立っている白髪に二本の剣を携えた冒険者風の少年だ。
もう二人は気を失って倒れているが、無傷だ。二人とも知っている顔だった。
シリアに不良冒険者のダズだ。この王都ギルド内でも問題児の二人だ。
闘技場の結界から外に弾かれた冒険者の方に目を向ける。
死屍累々と倒れている。
……ざっと見て数えた限り三十名以上はいる。
それもダズを含めた上級、中級クラスの冒険者ばかりだ。
(あの少年一人でやったというのか… 信じられん光景だ…っ‼)
◇◇◇
訓練場へと飛び込んできたのは、この国の冒険者支部をまとめ上げる統括官であり最高責任者の【フィーダ=マックレーン】当人であった。
彼は部下から『またシリア受付嬢が他所からやってきた冒険者をバカにしている』という報告を聞いたのだ。
シリアは無駄に気位が高く、自分がギルド本部の受付嬢をやっていることに誇りをもっているのだ。
しかし、その誇りと傲りをはき違えているのだ。
「王都に努めている私偉い!」と、勘違いしているのだ。
またかよっ!と思いながらチーフに注意してもらうように、と伝えて放置した。
それは、他所から王都にやってくる冒険者のそのほとんどにシリアはトラブルを起こしているのだ。
それも今回のように似たトラブルを…。
何度言っても言うこと聞かないので完全に呆れているのだ。
「なら首にしろ!」という話になるのだが、シリアは性格とは裏腹に頭が良く、真面目で働き者なのだ。
あの見当違いの気位の高さと性格さえ治れば、これ以上ない優秀な受付嬢なのだ。
毎度のことながら、一応私には報告義務があるので報告されるが基本的には受付嬢チーフのマアサがシリカを叱り、他所からやってきた冒険者に謝罪する。これが通例となっていたのだ。
しかし状況は悪化していた。
シリアに同調した冒険者たちが、他所からやってきた如何にも新人冒険者を連れて訓練場に入っていったと報告が入ったのだ。
「これはマズい!」と思ったフィーダは急いで訓練場にやってきたのだった。
腐っても王都の冒険者だ。
実力は折り紙付きの奴らしかいない。
連れていかれた新人らしき冒険者が心配のあまり急いで訓練場へと向かったのだ。
◇◇◇
周りの状況を見て即座に何が起きたのか判断する。
信じられないことだが、あの白髪の少年から漂う雰囲気は只者じゃない。間違いなくあの白髪の少年がこの状況を生み出したのは確かだ。
「私の部下が迷惑を書けたようだな。部下に代わって謝罪しよう… すまなかった」
フィーダ統括官が頭を軽く下げて謝罪する。
「いえいえ、私はただ降りかかってきた火の粉を払っただけですのでお気遣いなく」
白髪の少年が手に持っていた鮮血に塗れた木剣を異空間収納にしまいがら返事を返す。
「もしよろしければ、こうなった経緯を詳しく知りたいのだが教えてもらないだろうか?」
「申し訳ないのですが… 俺はこの後用事がありますので、またのご機会でお願いしたいのですが」
「……そうですか。ではまたお越しした時にでも、お茶でもしながらお話したいところですね」
「ええ。またの機会に… ではこれで失礼しますね」
そう言い残して白髪の少年は観客席にいた女性を連れて訓練場から出ていった。
(あの桃色の女も、侮れない魔力を有しているな…!! 一体何者なんだ…っ!!)
訓練場から出ていく二人を後ろから見守っていると、入れ違いに黒色の髪をなびかせた女性職員が入ってきた。
受付嬢チーフのマアサだ。
「よろしかったのですか? あの二人をあのまま行かせて…」
マアサのいう事はごもっともだ。しかし、これが最善だと確信していた。
「桃色髪の少女はともかく… あの白髪の少年はかなりヤバいな」
「……『かなりヤバイ』ですか。 それほどの者なのですか?」
「ああ、鑑定したがあのオーラで闘級4000はないだろ。明らかに偽造してやがる。それもかなり高価な偽装魔道具で、だ」
フィーダ=マクレーン冒険者ギルド本部統括官の鑑定の魔眼の能力は王国随一と言われている。そのフィーダ統括官が見切れないほど高価な魔道具だというのか、とマアサは驚きを露わにした。
それに、と付け足してフィーダが続ける。
「アイツはかなりヤバい。絶対に手を出してはいけない奴だ。あの年であの纏う雰囲気… 上位の魔族だと言っても信じられるレベルだぞ」
魔力はうまく隠しているようだったが、これでも私は元SSランク冒険者でかつて伝説のパーティで重戦士を務めていた実力者だ。見ただけである程度の相手の実力が解る。しかしあの少年は俺から見ても異質だった。まったく底が知れない、実力が完全な未知数の化物だ。
ギルド本部の統括官になって実践から遠のいたが、毎日の鍛錬は欠かさずやっているし、感は鈍っていないはずだ。そのはずなのに、私が「絶対に勝てない」と思わされるほどの秘めた実力をもっている少年。末恐ろしいものだ。
「あ、そういえば統括官! メルキド支部長ジェックス殿より報告書が届きました」
マアサから一枚の紙が渡された。
その紙には先日起きたメルキドでの大規模魔物暴走についての詳細が事細かに記載されていた。そして殲滅したと思われる者の風貌についての記載もあった。
その一文を読んでフィーダは驚き、そして疑惑は確信へと変わった。
―――――――――――――――――――――――
【メルキド大規模魔物暴走 詳細書類】
ー略ー
尚、この魔物暴走を単独で殲滅した者が王国第三王女殿下及び複数の騎士団、警備兵が目撃している。
しかし殲滅は僅か一瞬の出来事であり、明確な証言を言える者はいなかった。結果、有力な情報は得れてはいないが、アクアリア王女殿下により有力な情報を得ることが出来た。
殲滅したとされるその者の風貌だけは判明している。
殲滅者は冒険者風の格好をした男性。
成人前後の年齢に、髪色は白髪、武装は二種類の剣を左腰に帯剣している。
―――――――――――――――――――――――
(白髪の成人前後の男性… そして、二本の剣を帯剣…っ!!)
報告書からするに、殲滅後すぐに消えたと書いてある。
メルキド厄災からまだ十日と三日しかたっていない。そして報告では南門から北門へ向けて移動したとされており、その目的地はリルクヴィスト侯爵領方面、王都方面だと思われる、と記載されていた。
逃げた方角、そして王都への到達時間から察するに当てはまっている。
間違いない…っ‼
あの少年こそが、メルキドで起きた大規模魔物暴走を殲滅した冒険者風の白髪少年だ。
そんな化け物に挑んだこのバカ共はある意味、運がよかったのかもしれないな。
とフィーダは苦笑いしながら、血塗れで倒れている冒険者たちの救護の手伝いに向かった。
◇◇◇
「あー… びっくりしたぁ…ッ!!」
本当にびっくりしたよ。
まさか本部の冒険者ギルドマスターがやってくるとは…
しつこく誘われなくて助かったよ。
「それは私のセリフなんですけど…」
アイリスが少し怒り気味だ。なぜ?
「いきなり『教育してやる!』って冒険者たちを刺激して… それにあの数の冒険者相手に模擬戦仕掛けるって… ほんとうに!本当に心配したんだからね!」
アイリスが泣きそうな顔で抗議してきた。
俺のこと心配してくれたのか。嬉しいけど、余計な心配かけたっちゃなと少し悪い気がしてきた。
「けど、私のために怒ってくれてありがとうっ!! あの言葉… すっごく嬉しかったよっ!!」
カァア―――――― と自分の顔が赤くなっていくのが分かった。
やっべ今思い返すとすげぇ恥ずかしいこと言ったな俺!!
「すっごく強くてっ‼ それに… すっごく!かっこよかったよっ‼」
もうやめて‼ 私のライフはもうゼロよ‼
顔を真っ赤にした俺をアイリスが面白がっておちょくってきた。
だけどその内容がどれも俺を褒め称えるみたいな内容で次第にアイリスも自分が何を言っているのか我に返ったらしく、俺と同じ真っ赤な顔をしていた。
その真っ赤な顔になったアイリスはすごくかわいかった、とだけ付け加えておこう。




