閑話:英雄のいる街
気まぐれェエエエエ! トォオオッカァア!!
※ご指摘いただいた問題点に注意しながら執筆しました。
けどまだ、上手にかけてないです…。特に最後らへん… あとで上手に書けるように少しずつ編集して修正していきます。大体の大筋は変わりませんので大丈夫です。
アレクが冒険者ギルドに辿り着いたころ、メルキド草原には駐屯騎士団の騎士たちや冒険者たちによって後始末が行われていた。
「……この惨劇を一人でやったのいうのか?」
現場についた駐屯騎士団を束ねる部隊長のコニーズが部下からの報告を聞いて驚きの声を上げる。
コニーズの周りには言葉に表せないような凄惨な状況が広がっていた。
メルキド滅亡とまで言われた数万にも及ぶ大規模魔物暴走の魔物たちが今は見る影もない状態だった。原形をとどめている死骸は一つも見当たらない。そのすべてが斬り刻まれたの肉塊と化していた。
騎士たちの中には、その悲惨すぎる光景に嘔吐する者までいる。熟練の騎士と言えど、ここまでひどい惨状を見るのは初めてであった。それは部隊長も同じだった。嘔吐するほどではなかったが、その顔色は真っ青で、顔から血の気が引いていた。
「コニーズ殿。この惨状を生み出した奴について誰か分からないか?」
後ろから恰幅の良い男性が声をかけてくる。散らばっている魔物の肉片を軽快な足さばきで避けながら歩いてくる。その人物は、この街の冒険者たちを束ねるギルドマスターのジェックスだった。
「これはジェックス殿、会議ぶりで御座います。残念ながら、我々もまだ特定できていないのです。 多くの騎士たちが見ている前で起きた出来事なのですが、誰もその人物像をはっきりと言える騎士が居ないのです」
「ふむ…。私も早馬でこの事態を知ったが、実際に見た者から直接聞きたいのだが… 誰かいい人はおりませんかな?」
「それならば、適任者がおります。私もこれからお話をお聞きになろうと思っていたところです」
コニーズが言う適任者とは、防衛戦の指揮を執りに来たこの国の第三王女アクアリア王女を指していた。なぜなら、王女殿下はこの現場を目撃した騎士たちと同じく見ていた張本人でもあったのだ。
二人はそれぞれの部下たちに現場の後始末を任せ、南門前に設置された特設テントに待機しておられる王女殿下のところに向かうことにした。
テント前には王女殿下の護衛騎士たちが入り口を警護していた。
その中には侍女のマリア嬢の姿もあった。
私は侍女のマリアに事情を話し、中に居る王女殿下に会えないかどうか聞くとマリアは一礼してテントの中へと消えていった。
数分も立たずにマリア嬢がテントから出てきた。どうやら許可が下りたようだった。マリア嬢がテントの入り口を開け、中に入るように催促をする。
私とジェックスはテントの中へと入っていく。
中には王女殿下を含め数人の護衛騎士と剣聖様が一つのテーブルを囲っておられた。
肝心の王女殿下は椅子に座って何か考えておられる様子だった。
「ご考えのところ申し訳ございません。メルキド冒険者ギルド支部長であるジェックス殿がお話を伺いたいと申しておりますが、よろしいでしょうか?」
後ろに控えていたジェックス殿がコニーズの前に出る。
王女殿下は前に出てきたジェックスの姿を見て驚いた顔をしていた。
「…代官邸での会議以来でございます王女殿下。この街の冒険者を束ねる支部長のジェックスと申します。代官邸では自己紹介もできず、申し訳ございませんでした」
「ご丁寧な挨拶いただきありがとうございます。あの場では急ぎの場でしたので致し方ありません状況でしたので… 私はジェイド=フォン=アスラエル国王陛下が三女アクアリアと申します。私も自己紹介が遅れてしまい申し訳ございませんでした」
ジェックス殿とアクアリア王女殿下がそれぞれ挨拶を済ませた後、ジェックス殿が話を切り出した。
「…王女殿下はあの現場を目撃したお一人であるとお聞きしました。こちらにいるコニーズ殿から何が起こったのか聞きましたが、いまいちきちっとした証言が取れず… それで王女殿下に直接ご説明をお願いしたいと思い、馳せ参じた所存でございます」
私も王女殿下からちょうど直接お聞きしたいと思っていたので、これは渡りに船だった。
王女殿下が少しづつ話し始める。
「……私もご期待に沿えるお答えをできるか分かりませんが、お話させていただきます」
王女殿下の話は、やはり部下の騎士たちから聞いたものとほとんど同じ話であった。
一瞬で魔物たちは斬殺された、一瞬の出来事で理解が追い付かなかったと言っていた。その後ろに控える剣聖様にもお聞きしたが、同じ回答だった。
数万にも及ぶ魔物たちを一瞬で屠った、言葉だけではとても信じられない。
しかし、現場には確かに無残にもバラバラに斬り刻まれた魔物の肉片が転がっていた。そして感知魔法を使える騎士からの報告では、周囲には魔物の反応が一つも存在しなかったようだ。
メルキド滅亡とまで言われた魔物暴走は、たった一人の冒険者らしき人によって殲滅されたのだ。
「…そういえば王女殿下は魔眼の持ち主でございましたか?」
「はい。私は『千里眼』を持っております。」
魔眼とは、生まれつき備わっている魔法が宿っている眼のことである。
その宿っている魔法は人それぞれ違うが、目の前に居る王女殿下は確か『千里眼』と呼ばれる遠くのものを見ることが出来る魔法が宿っている魔眼だとお聞きしたことがある。それに噂では、王女殿下の魔眼は他の魔眼と違って頭一つとびぬけた効果を発揮すると噂がある。
なんでも、王城から広大な王都をすべて見渡すことが出来るほど強大な効力を持って居られるそうだ。
もしかしたら、王女殿下はその魔眼でその人物を見たのではないか?とジェックス殿は考えたのであろう。
「もしよろしければ、その魔眼で見た光景をお教えくださいませんか? もしかすると、その殲滅した者は新たな脅威かもしれないのです」
確かにそうだ。数万にも及ぶ魔物を苦も無く一瞬で殲滅しうる存在。未知の存在だ。はたして殲滅した者が人族であるのか、はたまた魔族なのかもはっきりしていない。その者がはたして味方なのか敵なのか我々は判断が付かないのだ。
肝心の殲滅した者はすでに現場にはいないのだ。
部下からの報告では東側に走っていくのが目撃されたようだが、まだ見つかってはいない。
王女殿下はそれを察したのか話し始めた。
「…私が魔眼で確認した限りでは、白髪の成人したての人族の少年に見えました。格好はマントと羽織っており、防具までは見えませんでしたが、腰には二本の剣を携えていた冒険者風の少年に見えました。しかし、その少年の内服する魔力量が桁違いに多い。量的には私の十倍以上ですね… 底知れない実力をもった少年でした」
その言葉にジェックス殿と私は開いた口が塞がらなかった。
まだ成人したてのお若い王女殿下でも、間違いなくこの国の五指に入るほどの実力を持っている。その王女殿下を軽く凌駕する実力を持っているとおっしゃったのだ。
これはメルキドだけではない、この国の一大事だ。
その者を即刻判明し、その人格と真意を見定めなければいけない。
ジェックスとコニーズの目が合う。
お互いに考えていることは同じようだ。
「…とても有意義なお話をお聞きすることが出来ました。では私たちはこれより、それぞれの本部に戻り報告書の作成と調査を行うことにします。王女殿下には、このことを国王陛下にお伝え願いたいのだがよろしいでしょうか? もちろん私どもで早馬を出してお知らせするつもりですが、この事態は現場を見た王女殿下が直接お話しする方がよろしいかと思われますので…」
「もちろんでございます。私の方から御父上に話を通して置くことにします。 それよりも、これは私が感じたことですが、すくなくともあの者に敵意や害意といった情を感じませんでした。その実力はともかく、少なくとも私たちの敵になる存在ではないと思います。どうかそのことを考慮してもらいたい。もし見つけても、無下には扱わないでもらいたいのです」
「…分かりました。そのことを踏まえ、人物の調査をさせていただきます。 ご貴重なお話をお聞かせくださりありがとうございました。それでは、失礼いたしました」
私とジェックス殿はテントを出ていく。
テントから出た二人は南門に向けて歩き始める。歩く中で二人は話していた。
「…王女殿下はああおっしゃっていたが、間違いなく新たな火種となりましょう」
「無論ですな。その者、冒険者風とおっしゃっていた。すぐにメルキドの冒険者リストから探してみることにする。コニーズ殿も何か解れば私に教え願いたいのですが…」
「もちろん情報は提供します。ジェックス殿こそ、冒険者リストの中に該当する者がおれば教えてもらいたいのですが、よろしいですかな?」
「では、これで協力関係を気づけたことにしようか。なんとしてもその者を見つけ出しましょう」
「えぇ。なんとしても見つけ出しましょう!」
(…必ず見つけ出して、新たな火種となる前に即座に処理する!)
(…フッ!! 必ず見つけ出してギルドの新たな手駒となってもらおうか…)
((このメルキドを護る為に…!!!!))
◇◇◇
恰幅の良い男性と部隊長の二人がテントから出ていく。
「…アクアリア王女殿下はいけずですね」
「さて… なんのことでしょう?」
シャーロットが後ろから聞いてくるが、それをすっとぼけたような返事を返す。
実はシャーロットとマリアにはあの二人には話していないことを話してあるのだ。
私が話したこと——————————
あの二人は話したのは本当のことを話したが、一つだけ嘘を言っている。
一番初めに聞かれた証言のことだ。
あえて私とシャーロットは騎士たちと同じ証言を通した。
一瞬過ぎて理解できなかった、見えなかった、気が付いたら魔物たちが斬り刻まれた、と。
しかし本当は見えていたのだ。あの白髪の少年が行ったことを。
もちろん、あの神速の剣劇を見えたわけじゃない。あれは次元が違う剣速だった。王国最強といわれる『剣聖』シャーロットですら見切れなかった剣速だ。
けど、あの白髪の少年の姿と纏う魔力を感じて一つだけ確信したことがあるのだ。
私はあの少年を知っている、と。
思い出すのは五年前。
私とマリアがあの魔物暴走によって、恐怖に震えていた時。
騎士たちが倒れていく中、もうだめだと思われた時に飛び出してきて私たちを救ってくれた駆け出し風の白髪の少年。
聞いた話では生死不明、おそらく死んでいると聞かされた。だから今回メルキドに来る途中にあの現場に行って簡易なお墓を立てたのだ。もし、私たちを救って亡くなってしまったのなら、せめて供養をしてあげようと思いたった行動であった。
あの時助けてくれた白髪の少年と、今回魔物暴走を殲滅した白髪の少年の魔力波長は類似していたのだ。
絶対の自信はない、五年前のことでもあるし、見て感じたのはほんの一瞬でしかなかったから。しかし、私は確信している。あの時の少年だ、と!
今日会った冒険者ギルドのギルドマスターの反応から察するに、おそらくあの少年は冒険者登録をしていても、ギルドマスターにまで顔を覚えられるほどの高ランクの人ではない。なら、おそらく誰にもバレずに生き残ったのだろう。
何があって、あそこまでの実力を手に入れたのかは分からない。
間違いなく初めて会った五年前より格段に強くなっていた。それもチートを与えられた私をも超えるほどの実力を手に入れている。
あの強さは異常だ。
世界の勢力分布を1人で狂わせるほどの力だ。
だけど、あの少年からは全く脅威は感じなかった。
その纏う魔力はとても暖かく、慈愛に満ちた魔力だった。
このことは、全てマリアとシャーロットに話しておいたのだ。
マリアは驚き、そして喜んだ。シャーロットはその少年に会ってみたいと興味津々になった。
これでも伊達に王族として十五年生きてきたのだ。
人の顔色を窺う日々だ。相手が腹の内で何を考えているのかは分からないが、少なくともその人がいい人なのか悪い人なのかは判断できるようになった。
あの恰幅の良い男性、ギルドマスターの男は何か企んでいる感じがしたのだ。コニーズさんからはこの街を護ろうとしている感じだった。それも普通のソレとは違う狂気にも似た必死さだった。
初めて会った会議室の時にはわからなかったが、このテントに入ってきた時、明かに自分の欲望を満たそうと考えていると直感的に感じたのだ。
だから私は話さなかった。シャーロットも私と証言を合わせてくれて助かった。
魔眼の効果を知られている以上、外見的特徴は話さないと変に疑われるので最低限の特徴だけ話した。
後はあの二人が勝手に想像してやっていくだろう。
けど念のために最後に釘を刺しておいた。まぁ意味はないだろうが…
それにどうやら、あの白髪の少年はまだ見つかっていないようだ。
まぁあれだけの実力を持っていて、騎士程度に見つかるはずもないと安心しているが。
「…リアちゃんは、これからどうします? もうあと一か月後には王都の学園の入試があるんですが?」
マリアが声をかけてきた。
マリアの言う通り、私は王都にある『王立アスラエル学園』に入学するために入試を受ける予定なのだ。これは王族としてではなく、この国の貴族なら誰もが通う通貨行事なのだ。
「メルキドに来た甲斐がありました。 正直、また魔物暴走に襲われたのはショックだったけど、それでも嬉しいことが一つ分かってよかった」
「…では王都に戻りましょうか!国王陛下への報告は私が行いましょう。全てお任せください!」
「えぇ。お願いねシャーロット! じゃ王都に戻りますか!」
私とマリア、シャーロットは護衛騎士たちを連れて、王都に戻ることにした。
※※※
王女殿下を乗せた馬車が王都に旅立った後、メルキドは歓喜に震えていた。
メルキド滅亡とまで言われた魔物暴走は何者かによって殲滅された。その衝撃の事実はあっというまに王国中に響き渡り、領民たちの耳に届いた。
それを聞いた領民たちはすぐにメルキドへと引き返したのだ。冒険者ギルドや衛兵詰所には連日のように領民が殺到した。その目的は当然ながら、殲滅した英雄についてだ。
しかしながら、冒険者ギルドも詰所も誰も殲滅した者を知らないのだ。
冒険者の中には「俺がやりました!」と名乗りあげる不届き者が多かったが、あまりにも名乗りあげる人が多かった為、誰も信じようとしなかった。結果、その声は少しづつ消えていったのだ。
歴史に残る偉業を達成したのに名乗り上げない寡黙な英雄がいる。
領民たちは喜んだ。
このメルキドには最強の英雄がいる、と。
結果、この街に移住を希望者が増えたのだ。
そして噂を聞いた人がたちは口々にメルキドをこう呼び讃えた。
英雄がいる街、と
宣伝効果としては絶大の効果を読んだ。
この結果に代官は大変喜んだそうだ。
今では年々減少傾向にあったこの街が今では移住を希望する者が殺到しているのだ。
今のメルキドは活気に溢れている。
これは間違いなく英雄のおかげである。
代官は必死に英雄を探した。
噂を聞きつけて訪れる貴族も私兵に雇おうと探した。
冒険者ギルドも血なまこになって探した。
領民たちもまだ見ぬ英雄探した。
しかし見つからない。
英雄の正体を知っている2人以外は必死になって探し続けた。
それがますますメルキドの知名度を上げた。
今ではメルキドは大人気スポット都市として毎日が活気溢れる街となったのだった。
今更ですが、新しい年号発表されましたね!
昭和→平成ときて、まさかの【令和】
うんっ!違和感しかないわ…( ̄◇ ̄;)
まぁこれも慣れですかね…
さて平成の終わるまでに頑張って学園入試編、入学編までは描けるように頑張ります!