閑話:幼馴染の決断、護られる側から護る側に立つ。
これにて、第一章終了!
きーまぐっれトォオオオオカァァアアアア!!!
キースは急いでいた。
何としても逃げきる、それだけを考えて必死に馬車を走らせていた。
キースはこの馬車を警護、護衛するために選ばれた騎士隊長だ。
馬車には護衛対象である第三王女、荷台には血を流した負傷者が乗っている。
負傷者には回復ポーションを飲ませているが、何分傷が深い。軽傷者ならポーション類は有効だが、致命傷を受けてしまった重傷者には、すぐに治療魔法を施されなければならないが、ここには治癒魔法を使えるものがいない。そのために、街に全力で馬車を走らせていた。
いや全力で走らせる理由はそれだけではない。
すぐ背後には魔物の大群が魔物暴走となって迫ってくる可能性があったのだ。その死地から全力で逃げなくてはならない、馬車に乗る第三王女様を何としても守り抜かなければならない。それが騎士として、護衛隊長としての責任だ。
部下は五名いたが、一名が重症。残りは軽傷で済み、全員が無事だったのが幸いだった。
本来なら今頃、全員魔物たちの腹の中にいただろう。下手をすれば、馬車の中にいる高貴なお方も食べられていたかもしれない。そんな死地から全員そろって生還し、逃走できている。
それは、たった一人の冒険者の少年のおかげだった。
その少年はまだ若く、おそらく成人もしていないだろう駆け出しの冒険者だったが、その実力は他を圧倒した。たった一人で魔物を引き付け、蹂躙し、活路を切り開いたのである。言葉は悪かったが、子供とは思えぬほどの決断力だった。まさに英断、あの場において少年の指示に従って逃げることに騎士としては賛成しかねるが、護衛としての責務を問われ、我々は撤退したのだ。
我々が撤退できたのは、間違いなくあの駆け出しの少年冒険者のおかげであった。
馬車の中では心根からお優しい第三王女のアクアリア様が必死に「引き返して!」「あの少年を助けて!」と我々に訴えているが、部下と第三王女お付きのマリア様が必死に説得していた。
確かにあの場で見殺しにするには、もったいないほどの逸材だった。
せめて…名前だけでも聞いておけばよかった、と今では後悔している。
ここで失うにはもったいないほどの人材であった。それでも、我々はこの馬車に乗るお方をなんとしてでも守り通さねばならないため、見捨てるしかなかったのだ、と、そう割り切りなんとしてもリルクヴィスト領まで逃げ切ることだけに集中して馬車を走らせていた。
◇◇◇
もうあと数十分もすればリルクヴィスト領にある都市キースに着くだろう。あそこは強固な外壁に覆われた都市で、リルクヴィスト領一大きな街だ。そこには代官様ではなく領主様自らが住んで統治されておる都市だ。
あの都市には憲兵団や冒険者ギルドがある、街に逃げ込めば第三王女様の安全は確実に確保される。そうすれば、私はすぐにあの死地へと少年を救出しに戻る!なんとしても助け出すのだ!
しかし、残り数キロで街と言う所で前方から土煙が上がっているのが見えた。それと同時に魔力探知が出来る部下から声がかかる。
「前方から複数、いやそれも大量の騎馬隊の反応があります!」
まさか、盗賊団か? いや大量の馬を所有できるような大物盗賊団がこんな辺境地に居るはずがない。どちらにしても、魔物ではないだけマシと言える。しかし味方であるという保証もない。このままではあと数分もすればぶつかる。
はやく決断しなければならなかった。
味方と信じて、このまま鉢合わせるか、それとも隠れてやり過ごすか。
後方からは魔物が追いかけてくる気配はない。少年が護ってくれているおかげだろう。
「キース隊長! 迂回しますか?」
部下も複数の騎馬隊は敵である可能性を考慮しているんだろう。
(どうするキース!決めるのはお前だ!早く決断しなければ迂回ルートすら入れないぞ!)
自問を繰り返す。悩んだ結果、出した答えは「このまま直進せよ!」だった。
賭けるしかない。
重傷をおって荷台で血を流して今にも死にそうな部下を迂回して余分な時間をとられるわけにはいかない。それに早く第三王女様の安全を確保しなければならないし、少年の援護にも向かわないといけない。これ以上時間のロスは減らさなくてはならない。
俺は正面の土煙を上げて突っ走っている騎馬隊に正面から会うことを決めた。
数分後
正面から土煙を上げてやってきた騎馬隊を指揮していたのはなんと、リルクヴィスト侯爵家の次期当主である嫡男ジーク様であった。
◇◇◇
「ご無事でなによりでございます何よりでございますアクアリア王女殿下」
平和の象徴である白鳩に中立を意味する両天秤の紋章、王家の紋章が刻まれた馬車の前で成人を迎えたばかりであろう一人の青年が首を垂れ、膝をついて礼儀の格式を取っていた。
彼こそが、リルクヴィスト侯爵様の嫡男ジーク=フォン=リルクヴィストである。今年王都の王立アスラエル高等学園に首席で合格した賢明で聡明なお方であると評判だが、どこか黒い噂が絶えないお方でもある。しかし、その青年からはそんな黒い噂が付いているとは思えない好青年な印象を受ける。
そんなお人がバーデン侯爵閣下の私兵団約百機を率いてやって来たのである。しかし、相手は侯爵家の次期当主だ。我々騎士とは身分が違うため、馬車の横で敬礼して平伏して状況の成り行きを見守るしかできなかった。
アクアリア様が馬車から降りて、なぜここに騎馬隊を連れているのかお聞きになっていた。
「本日、メルキド方面で異常な魔力波を捉えましたので、王女殿下が危ないと思い、急ぎ救援に向かった次第でございます。ご無事で何よりでございました」
「わたくしの身を案じての行動、誠にありがとうございます。メルキドへ向かう途中、魔物の群れに襲われましたが、もう駄目だと思われた時、突然現れた名の分からぬ冒険者に救われ、命を助けられたのであります」
「それは、誠に災難でございましたね。御身がご無事で誠に何よりでございます」
「それはそうと、ジーク様に一つお願いしたいことがございます。我々騎士と私をお救い下さった冒険者様を助けていただきたいのです」
「それは喜んですぐに救援に向かわせましょう!すでに後ろにはわが父の選りすぐりの私兵がございます。たとえ数万の魔物暴走であっても瞬く間に殲滅してみせる実力者ばかりでございます。この者たちにすぐに救援に向かわせましょう!」
「本当にありがとうございます。どうか、我々をお救いになった冒険者様をお助けください」
「心得ました。アクアリア様には一度この先の都市キースに一度お避難ください。すぐに魔物どもを片付けて参りましょう」
そう言い残し、一礼してジークはその場を後にして後ろに控えていた騎馬隊に支持を出しに行った。
アクアリア様はこれで何とか少年を助けてもらえると安心しておられた。そして、勇気ある少年の無事を天に祈りながら馬車にお乗りになり、我々はリルクヴィスト領に向かうことになった。
※※※
「おい、ジャンスイ! どうやら邪魔が入ったようだ」
そこには先程まで礼儀正しく、好青年のような雰囲気を醸し出していたジークではなく、醜悪な形相をしたジークがそこに居た。ジークは自分が率いてきた私兵団の隊長らしき男に話しかける。
「そのようですね。しかし、護衛騎士の話によれば飛び込んできたのは駆け出し風の少年ただ一人だったようです」
「チッ 余計なことをしやがって。オイ!わかってるだろうな?」
「ハッ」
「そのガキは確実に始末しろ。作戦を邪魔してくれたんだ、生かしておくな。処理も任せたぞ!痕跡一つ残すな。すべて偶然起こってしまったようにしておけ」
「分かっております。必ずや、その少年の首を跳ねて持ち帰りましょう。しかし魔物暴走に一人突っ込んだようですので、おそらく生きてはいないでしょうが。」
「念のためだ。確実にそいつの息の根は止めておけよ。俺はこれから愛しいアクアリアを我が屋敷に案内しなくてはならないのでな」
「心得ましたでございます」
そう言い残し、私兵団の隊長であるジャンスイは私兵団を連れて走り去っていった。
この私兵団の隊長であるジャンスイは元傭兵で数々の戦場を渡り歩いてきた猛者であり、父上が最も信頼を寄せる暗殺者でもあった。ジークはその男を信用して、この引き起こした事件の後始末を任せたのであった。
※※※
◇◇◇
ジーク様率いる私兵団と護衛についてきた騎士たちによって無事、リルクヴィスト領にある都市キースにたどり着くことが出来た。本の数時間前まで、魔物に殺される恐怖に侵されていたとは思えないほどの安心感が漂う。
私は助かったんだ。
しかし、私たちを助けるために飛び出してきたあの勇敢な少年はどうなったんだろう?いやきっと大丈夫。あれだけ強いんだ!きっとジーク様の率いる私兵団に救出されたはずだ!そう信じるしかできない、あの少年の無事を祈ることしかできない。
お願い、どうか無事に生きていてください!、とリルクヴィスト侯爵の屋敷に用意された一室の客間で一人少年の無事を祈っていることしかできなかった。
私が客間でくつろいでいると、扉をノックする音が聞こえた。外からはジーク様の声が聞こえてくる。きっと少年が助け出されたことを伝えに来てくれたんだ!そう思い、急いでジーク様を部屋に招き入れる。
しかし、現実は残酷だった。
「私兵団が到着したときには既に、少年の姿は無かったです。そこには大量の血痕が飛び散っており、血溜りには折れた剣が残ってあったそうです。残念ながら少年の遺体などは発見できず、おそらく食べられてしまったのでないかと思われます」
私の目の前が一瞬で真っ黒に染まった。先ほどまでずっと少年の無事を祈っていたが、それは無意味に終わった。ジーク様が必死に何か言ってきているが、何を言っているのか耳に入ってこなかった。
「……わざわざ救援に向かっていただきありがとうございました。申し訳ございませんが、少しだけ一人にしてもらえませんか?」
そう絞り出すだけで精一杯だった。ジーク様は何か言いたげだったが、グッと飲み込んで部屋から一礼だけして出て行ってくれた。
私たちを助けるために勇敢な一人の少年が死んだ――――――
それも、私と同じ年の成人もしていない未来ある若者を…
自分がもっと必死になって努力をしていれば、騎士たちや勇敢にも助けに来てくれた少年を見殺しにせずともに切り抜けることができたかもしれない。あの魔物たちに立ち向かう勇気があれば、少年は一人で戦うこともなかったかもしれない。私がもっと… 強ければ、少年を救えたかもしれない。
「全部、私のせいだ…」
努力を怠った結果、一人の少年が命を落とした。
命を奪う覚悟を決めれなかった甘さが、少年の命を奪った。
私には強くなるための【加護】があったのに、私は使わなかった。
全部、私の甘さと弱さが招いてしまった——————
その場で崩れ落ちる。
『王女に生まれた私は人前で感情を露わにしてはいけない、人のモデルとなるべき存在である。』
そう教わってきた。
この先、王族である私を生かすために沢山の人が命を落とす。護って死んでいく。
しかし、その人たちを憂うことはあっても決して表面に出して泣いてはいけない、泣くことは許されない。それは私を生かすために死んでいった者たちへの侮辱に当たるから、そうマリアから教わってきた。
だけど… どうしても我慢できそうになかった。
私が殺したようなモノだ。実際にそうした訳ではないが、そう考えてしまう。
少年が勝手に飛び込んで死んだだけだ、周りはそう判断するだろう。
第三王女を守るために死んだんだ!栄誉の死だ!、周りはそう評価するだろう。
しかし、誰も少年のことを思わないだろう。この世界では命の価値は軽く、すぐ散っていく儚いものだ。誰の記憶にも残りはしない。誰の記録にも残りはしない。たった一人の駆け出し冒険者が運よく第三王女を守って死んでいっただろう、そう民衆から思われて終わるだけだ。
命はそんなに軽いものじゃない、最も尊ぶべき大切なものだ。
命に評価を付けてはいけない、優劣をつけてはいけない、すべては平等であり、たった一つの大切なものだ。
それが当たり前の世界から私は転生してきた。きっと異世界でもこれは普通のことだろうと思っていた。生き物の命は生きるためには仕方がない、そう割り切れるが、人の命は違う。ましては私と同じ年ごろの男の死。未来の無限大の可能性を秘めた少年の死。しかし周りは英雄だと褒め称える。
「もう、分からない…」
私は声を殺してその場で泣いた。
◇◇◇
声を殺して泣いていたら、いつの間にか泣き疲れて眠っていたようだった。
目を覚ますと、目の前には侍女のマリアが座っていた。
「アクアリア様…… いや、リアちゃん」
“リアちゃん”随分久しぶりに呼ばれた。私がマリアに頼んでそう呼んでもらっていたが、最近になって呼ばれなくなってしまった名だった。
「人は必ず死ぬ。それは絶対なの。だけど、人の生きざまは死んだときにしか分からない。例え、魔物に負けて喰い殺されても、それが何か護った意味ある死と、何もできずただ無残に殺されただけの死。どちらが幸せだっと思いますか?
私は答えなかった。いや、答えることができなかった。
無言で黙っているだけの私を見てマリアはそっと微笑み話し始めた。
「私たちを守ってくれた少年は、意味ある死です。それこそ私たちが死んでしまっていたら、少年が浮かばれません。ただの意味のない死、無駄死に、犬死です。私たちは、私たちを生かしてくれた少年のために、この先の未来を進まねばならないのです。それが死んでいった者たちに対する唯一の救いであり、想いです。だからリアちゃんは今は思いっきり泣いてくださってもかまいません。しかし、その代わりこの部屋を一歩でも出たら進む覚悟を決めてください」
「……進む、覚悟…?」
「前を向いて歩み続ける覚悟です。このままでは一生縛られてしまう、それは死んだ者に対する侮辱です」
言っている意味は分かる。だけど、そんな簡単に進めないよ…
私はそんなに強くない… 私は強くなれる力を貰ったのに、努力しなかった甘えん坊だ。
みんなの優しさに付け込んだただの甘ちゃんだ。
「自分を責めるのは、ここで全て終わらせてください。ここを出たら一緒に私と歩みましょう」
「一緒に歩む…?」
「もう後悔はしたくないでしょう?もうこんな思いはしたくないでしょう? それにリアちゃんは知りました。魔物に対する恐ろしさをしった、魔物に襲われる恐怖をしった、リアちゃんは最も大切なことを知ることが出来ました。それに、リアちゃん武芸に関するの素質は王国随一です。護られる側から護る側に立てる力です。私ももう、護られて誰かが目の前で失うのは嫌です。だから私は前に進みます。護るために」
護るために、前に進む。
護られる側から護る側に…
その言葉が私の中で止まってしまっていた心を動かした。
足らなかったピースが埋まって完成したパズルのようにカチッと心のパズルが完成したように。
そうだ。今度は私が護る側に立つんだ。何者にも負けない力を手に入れて、こんな思いをいないように!
私は涙を拭って立ち上がる。突然立ち上がった私を見てマリアがびっくりする。
「私… わたし、強くなりたい!もうこんな思いしないために!」
今度はあの少年を助けられるように。今度こそ一緒に並んで戦えるように。
次は無い。もう失ってしまった。過去には戻れない。しかし、私には未来がある。
未来ではきっと、また同じことが起こるだろう。王族だからといって安全な場所でいているだけなんて、もう嫌だ!今度は私が全部護る!
そう決意した。
この五年後、アクアリアは王都にある『王立アスラエル高等学園』に首席で合格する。いままで『神童』『才女』と呼ばれてきたが、決してその威光を示そうといなかった彼女が、真のその名を受け継いで、学園へと入学するのだ。それはまだ先のお話。
この日からアクアリアは誰にも負けない力を得るために修行を始めた。
これにて、第一章終了!
なんとか書けました。しかし文章がぐちゃぐちゃ… 修正の嵐になりそうな予感。
もうちょっと分かりやすい表現を使って頑張ってみたいと思います。
☆それと私!初めてTwitterを始めました☆
正直、何のために始めたか分からない…Σ( ̄ロ ̄lll)ガーン ただの気まぐれスタートです。
リア友みんなTwitterやっているのに、自分だけやっていないという、なんとも虚しいことが判明したので始めました。しかし、Twitter始めたはいいけど、そもそもTwitterって何するところ?って疑問にぶち当たり、小説投稿してるし、ちょっと宣伝してみよう!って気持ちで始めました!これからTwitterの方もちょくちょく使い方を学んでいきたいと思います(え?なんのために?)
これからも執筆頑張っていきますので応援よろしくお願いします!
次話から第二章『修行の成果→ヒロイン登場→ヒロインと共に学園入学→学園編』に入ります!
暇つぶし程度に読んでいってくださいね!(´▽`*)ありがとうございました( ^^) _U~~




