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30.決着

気まぐれトーカ。


※男の名前を変えました。

ジャッガ・ロックスター➡︎ジャッガローズ・ロックスター

お互いが距離を取って相手の出方を窺う。じりじりと足を地面にこすりながらお互いが距離を取り合う。先に先手を取ったのはアレクだった。



一気に男の懐まで飛び込み下段からの剣技をフェイクに喉元へ剣を突き刺す。男はそれを剣で弾き飛ばし、回し蹴りでアレクを吹き飛ばそうとするが、それを軽快な身のこなしでアレクは躱す。躱すと同時にアレクは魔力弾を発動するが、男は瞬脚で離脱して距離を改めて取り直す。




◇◇◇



男は少年の技量を脅威と感じていた。接近戦なら間違いなく俺様を凌駕する、と。

しかしそれなら遠距離の魔法戦をすればいいのでは?と考えられる。実際、目の前の少年が使っているのは精度や無詠唱は素晴らしいがすべて初級魔法である。見事にこちらの動きを予測して妨害してくる。初級魔法のため威力は大したことはないが、食らえば多少なりともバランスを崩し、隙を与えてしまう。


それに俺様は理由があって、現在魔法を行使できない。今は純粋な武力のみで戦っている。魔法さえあれば目の前の少年を一瞬で灰にすることができるが、剣劇だけだと分が悪い。



少年が一気に跳躍して懐まで入ってくる。一瞬反応が遅れ、僅かな隙が生まれるが、これでも魔族だ。種族としてこちらが圧倒的有利なスペックを持っている。即座に反応して少年を剣を弾いて即座に距離を取る。


人間の子供が魔族である俺に対して互角以上に張り合っている、悪い冗談だ。種族としてのスペックはこちらが圧倒的に有利で回っているはずなのに、押し切れない。逆にこちらが押し切られてしまう。


尚も少年が一気に飛び掛かってくる。はじめからわかっていたことだが、凄まじい剣術だ。このままでは押し切られてしまう、そう思った男は自分の持っている魔剣に僅かに回復していた魔力を流し込み、魔剣を暴発させる。


暴発の衝撃で吹き飛ばされ、身体には無数の傷ができるが、魔族の俺にはこの程度の傷など、傷に入らない。数十分もあれば完治する。少年もこの暴発の衝撃で拭き飛ばされ、隙が生じたはずだ。暴発の衝撃で今は土煙でお互いの状況が分かっていないが、魔力探知で相手の場所がわかるこちらが有利だ。


この隙を逃しては負ける、そう覚悟を決めてこちらから攻め込み、間合いを潰す。しかし少年も同じことを考えていたようで土煙を突っ切って斬りかかってくる。


少年の技量と今の状況、能力を考えれば、俺に勝ち目はない。

多少の隙を作ることになるが、回避優先すべきだ! 男は離脱しつつ、少年目掛けて剣を振り抜いて牽制するが、見事に少年に躱され、弾かれる。


「! …しまった!」


剣が弾き飛ばされ、致命的な隙が生じる。

少年の技量を考え、正面からぶつかることを避けようとした、普通なら正しい判断だったが、これが敗因の原因となった。


僅かな隙を逃すはずもなく、少年は俺の躰を見事に両断していった――――――




◇◇◇




俺の一撃が男の躰を両断する。

お互いに同じ思考を取っていたようだ。暴発の隙をついて相手に斬りかかる、まった同じことをした。しかし男はなぜか、途中で飛び掛かるの辞めて、離脱を試みた。途中で動作を辞めて別の動作を行う、どんな一流の戦士でも必ず一瞬隙が生じる。僅かな時間しかないが、その隙を逃せば次は無い。


そう思い剣を振り切った。そして見事に俺の剣は男を両断した。

ほんの一瞬の判断の差で勝利した。もし長引いていれば負けていたのはこちらだったかもしれない。


両断された男の方を見ると、男の身体は右肩口から左腰で見事に両断されていた。これは助からないな、と思ったが、男は驚くことにまだ息があった。


「ゴホッ… く…くく。やるじゃねぇーかよ…。これでも魔界一の剣術を誇ってたんだがな…。さすがに…ブランクがあった…ようだな…。 見事な腕…だったぜ…」


躰が両断されているのに、話しかけてくる。ある意味ホラーだ。

上半身だけになっても、動いて喋りかけてくる男に若干の恐怖を抱きながらも、生きているうちに情報を取ろうと男に話しかける。


「…死ぬ前に教えてほしいんだが、お前は『おかげで作戦が台無し』だと言った。その作戦ってのはなんなんだ?それに、お前に作戦を指示したのは誰なんだ?」


「よーく、覚えてるじゃ、ねぇーかよ…。俺を見たときに… ビビリまくってたガキが…。」


「早く答えろ!」


「クク… 答える、わけねぇーだろ… バーカッ!誰がてめぇなんかに… 話すかよ!俺はあの方を裏切ったりはしねぇーよ!」


さすがに口を割ってくれない。よほどの忠誠を誓った人がいるようだ。仕方がないので戦闘中は見る余裕が無かった“看破の魔眼”を使って男のステイタスから情報を探ることにする。


=========

【名前】ジャッガローズ・ロックスター

【上位魔族:鬼人族】

【状態】瀕死、魔力枯渇

【称号】魔王軍幹部 魔剣士 魔剣使い 鬼神

【闘級】2万7340

(武力:2万 気力:4000 知力:3000 魔力:340)

【技能】

魔剣剣術Lv.8

魔力制御Lv.8

魔力探知Lv.4

身体強化Lv.7

【属性魔力】無、炎、闇

【固有魔法】鬼神化(種族固有)

【贈与】剣術《極》

【加護】魔王の加護

【所持魔剣】炎精魔獣の剣

=========


……驚いた。魔王軍所属の、しかも幹部だ。


闘級もズバ抜けて高い。

それに【状態】に『魔力枯渇』とある。少しずつ魔力が回復してきているが本来はもっと高くて闘級も高かったんだろう。


【状態】のところをより詳しく見てみると。

=========

【状態】瀕死、魔力枯渇


古の勇者との戦闘により敗北。上位魔族のほとんどが封印されるが、近年、封印が弱まった影響により封印から逃げ出した。その際に魔力のほとんどを封印に持っていかれたため、魔力枯渇状態に陥っている。

=========


なるほど… 封印の影響で魔力がほとんど空だったのか。

っていうか近年、封印が弱まっている!? マジかよ。ってことは…


「あの方っていうのは、魔王のことか? ジャッガローズ・ロックスター!」


「て、てめぇ… 鑑定持ちか!チッ… 本当ヤバい奴に出くわしちまったな。魔力さえ回復してりゃ… てめぇみたいなガキ一捻りなのによ!負けるわけねぇーんだよ…」


悪態をついているが、こいつの反応から間違いない。

魔王の封印が解けて復活する。そのための作戦だったんだ。しかし、封印が弱まって自然に解けるはずなのに、なぜ魔物暴走(スタンピート)を引き起こそうとしたんだ?

そのことを問いただすと、


「しらねぇーよ。 ただ、ここいらに邪香木っていうモンが炊かれてたんだよ。そこに集まった雑魚どもを利用しようとしただけだ」


邪香木が炊かれていた? 邪香木ってアレだよな…? 魔物をおびき寄せるために使われる魔寄せに使われるアレだよな…? なんでこんなところに炊かれてたんだ?


魔引きが行われました、って言ってたよな… それの残りか? いやそんなはずはない。放置すればどんなことになるかなんて、みんな承知のはずだ。と、いうことは… まさか…。


誰かが意図的に仕組んだ――――――――


そうとしか、考えられないんだが…。厄介ごとに巻き込まれた気がするぞ… オィ…。



色々と思考を巡らせていたことにより、アレクは一瞬気づくのが遅くなってしまった。目の前の魔族が逃げるための行動に移していたことに。



ふいに目の前の魔族の男ジャッガの姿が輝き始めた。


「な、なんだ?」


「クックックク… 間抜けめ…。 そこらへんはまだガキだったな。」


そう言い残すと、ジャッガの周りに魔法陣が現れた。その手には魔術が書かれた巻物が握られていた。その巻物が光っている。と、すると―――――


「しまった!! 転移の《スクロール》か!」


《スクロール》それは魔法が封印された巻物である。一回限りの使い捨ての魔道具だが、希少なものでまず一般人ではお目にできないものだ。それを男が使って逃げようとしている。


即座にトドメを刺そうと剣を振り下ろすが、時すでに遅し。ジャッガは転移していった。

最後に「この借り、必ず返すからな!俺様の名をしっかり覚えてるがいい!」と言い残して消えていった。


やられた、完全な俺のミスだ。


即座にトドメを刺しておかねばならない男だった。身体を両断されてまだ逃げる算段を考えていたとは思いつきもしなかった。その決めつけた固定概念が男を取り逃がしてしまった。






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