スペイン人司祭の伝説
マヤの神話と伝説
スペイン人司祭の伝説
ホンデュラスにあるカスケの洞窟は隠者伝説と関連づけられています。
幾つかの現地の言葉で、先住民に対する絶滅に加担することを拒絶してその地を隠れ家とした一人のスペイン人の司祭のことを語る伝説が残されているのです。
彼は何年かしてその地で死に、実際誰であったのか、判らぬままでした。
ホンデュラスの宗教界にも彼の名前は記録されておりません。
これは稀なことです。
司祭は勿論のことですが、侍衆の末端まで、教会の記録には残されているのにかかわらず、彼の名前は残されていないのです。
クリストバル・コロン(コロンブス)の主任司祭として1502年8月14日にプンタ・カスティナスで最初のミサを行ったアレハンドロ神父に始まって、タグスガルパ(今日のテグシガルパ)の先住民に信仰の教育を施して亡くなった宗教者に至るまでそこには記載されているのですから。
その洞窟に二人のスペイン人の修道女が辿り着き、洞窟の前で跪いて祈りを捧げたと言われております。
誰かが何故そのような特異な振る舞いをしているのか尋ねると、彼女たちは一人の仲間から呼ばれて来たとだけ答えるにとどまり、その男の名前を明かすことはしませんでした。
彼女たちが立ち去った時、人々はこのような問いかけを行いました。
「名前も知らないスペイン人の司祭の死をどうして知ることが出来たのだろうか?」
「どのようにして、彼女たちは聖庁によって知らされたのだろうか?」
「ひょっとしたら、あの隠者の亡霊が彼女たちの前に現われて、埋葬されている正確な場所を告げたのであろうか?」
誰もこれらの問いかけに答えることは出来ませんでした。
そして、この伝説は非常に強い力で伝承され、1936年になって、カスケの司祭によってその洞窟は祝福されました。
それ以降、そこは巡礼場所となったとのことです。
- 完 -