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マヤの神話と伝説  作者: 三坂淳一
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バラ・アルタの伝説

マヤの神話と伝説


バラ・アルタの伝説


 昔、都市に住んでいたマヤ人は王族の血統に属さず、また司祭の家系にも属してはおりませんが、一人の長を持っていました。

 全くの平民出身でしたが、学識があり、人々は彼をバラ・アルタの首長という称号で呼んでおりました。

 この人物は「陛下」とか「崇高な閣下」とも命名された標章を身に付け、宗教的な管理者としての役割を果たしておりました。

 彼の前では、庶民は帽子を脱ぎ、身を屈めました。

 その妻、母、娘たちはひざまずきながら進みより、バラ・アルタから垂れ下がっている縁飾りに口づけました。

 というのも、彼らは全て、この紋章を神そのものと考えていたからです。

 他方では、バラ・アルタはその年に耕作すべき土地をおのおのの家族に決めるという指図をすることから、地の神の守護者でありました。

 裁判官の役割も果たしました。

 彼の前で、告発が行われ、その後、彼は正しく公正であると見做されておりましたので、一層の従順な態度をもってその裁決が受け入れられました。

 バラ・アルタの由来を語る伝承があります。

 集落から随分と離れたところに、高い階級の者たちは、部落の人たちが共同で耕す畑を持っておりました。

 主人だろうと、奉公人だろうと分け隔てなく、全ての人に分配されるほどの沢山の収穫がありました。

 人々は狩猟とか漁労とか、或いは、塩を取る季節であっても、この高い階級の者たちから好意で与えられた役割を果たす時間は惜しみませんでした。

 このような活動は全て、共同体を実現するものであったのです。

 彼ら、高い階級の者たちは支配者層の息子たちで、任務をそれぞれ分担しておりました。

 彼らはバタブと呼ばれ、地主でありました。

 民衆は彼らの中で最高位の者、ハラク・ウイニクを尊敬しておりました。

 一般的に、彼はバタブの館がある中で一番良いところに暮らしておりました。

 ハラク・ウイニクは執事として、アー・クレルという者を抱えていました。

 アー・クレルはカルアクと命名されていた、太く短い杖を官杖として持っておりました。

 彼は指導する民衆の全てからたいへん尊敬されておりました。

 民衆は彼を随分と尊敬していたので、彼に鳥、とうもろこし、蜂蜜、塩、魚、衣服、その他もろもろの物を贈り物として捧げていました。

 そして、彼は官庁の執務室である自分の家でその貢物を分配しました。

 アー・クレルはまた、その地区の統治者でもありましたが、民衆との取り決め事項は全てハラク・ウイニクの承認を通して行われることとなっておりました。

 その職務の一つに、聖なる歌と踊りを共同体に指導するということがありました。

 中をくりぬいた丸太のことですが、テュンクルはマヤではたいへん重要な楽器の一つでしたので、彼によって保護され、大事にされていました。

 そのテュンクルはマヤ民族の劇的且つ歴史的な聖歌の調子を取る時に使われました。

 いくつか、職務がある中で、もう一つ挙げれば、聖なる象徴、といったことがらを議するために人々が集まる館であるポピルマを管理するという職務もありました。

 スペイン人の征服者はマヤの都市国家の社会的組織を破壊したと云われています。

 バタブ、又は支配者といった者は姿を消しましたが、カルアック・アー・クレルは以前として残り、そういった社会的組織のシンボルと考えられました。

 服従させられたマヤの生き残りの人々にとっては、とても強力なスター。

 聖フランシスコ会の修道士たちが先住民がその者を呼ぶ、その名前を耳にした時、カルアクという響きでその言葉を聞いたと思いました。

 すぐに、自分たちの言葉に翻訳し、キリスト教的にそれを名付けました。

 修道士たちは彼を、昔から果たしている役目には気付かずに、「バラ・アルタ(高い棒)」と呼びました。

 それで、古代マヤである先住民はその呼び方で彼を呼ぶことに疑いを持ちませんでした。

 今日まで、そのような呼び方が伝わっているというわけです。


- 完 -


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