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そしてビールを飲み干したユーリが答える。
「こんなところまで名前が通ってるか知らねえが。俺らは『夜鳥』っていう掃除屋をやっている。そんなベッドかテッドが知らねえ3流グループなんか入ってもねぇ」
ユーリが言い終えると一斉に周りの客たちが声を上げる。その声の大きさにユーリ達はビクッと肩を揺らす。
「おぉ。有名な《夜鳥》が我が町にやってくるとは」
「流石《夜鳥》だな。かっこいいな」
先ほどまでの緊張感はどこにいったのか店内にいた客たちがぞろぞろとユーリ達の周りに集まって来る。
「いやぁ。すまなかった客人、今この町はいろいろと物騒でな。この飲み代はタダで構わねぇ。詫び代として受け取ってくれ」
マスターはガハハと笑いながら気さくに話しかけてくる。未だにユーリ達は周りの態度の豹変についていくのが不可能だった。そんな二人に気が付いたのかサラは話を始める。
「この町は・・・」
ガシャーン!
サラの言葉は店外の騒音にかき消されてしまった。何があったのかとユーリ達は店の外に目をやる。其処には大声を上げながら、暴れている暴徒たちが数名いた。
「お客さんこっちに!」
サラは二人をカウンターに引っ張り、外の暴徒から見えないように隠れた。外にいた暴徒達は店のドアを思い切り開け、荒々しく店内に入ってきた。
「おーいッ!マスターさんよ。今週分の食料と酒をもらいに来たぜ」
暴徒の一人がヘラヘラしながらマスターに話しかける。マスターはカウンターを出て、暴徒達に肉薄する距離まで近づく。
「貴様らにやる物なんて一つもない!」
マスターは今日一番の大声を暴徒達に浴びさせる。その暴言を受けた暴徒達は店内にある木の椅子を手に取り、躊躇なくマスターの頭に振り下ろす。その衝撃でマスターは前のめりに倒れる。
その行為にユーリはカウンターから出ていこうとするがサラに袖を掴まれ、首を横に振り飛び出すことを止められる。
「おいおいマスター。俺らはこの町を守るために頑張っているんだぜ。その報酬を貰って何が悪いんだぁ?」
暴徒達は未だニヤニヤしながら、倒れたマスターの頭の上に足を置く。周りの客達もその光景に拳を強く握るが、その拳を暴徒達にぶつける事は出来なかった。
「まぁいい。また明日来るから、その時までに食料と酒を用意しとけよ!」
暴徒はマスターの頭から足を外し、店の外へ出て、帰っていった。サラは帰ったのを確認すると倒れたマスターの元へ急いで駆け寄る。息はあるようだが意識は失っていた。
ユーリ達は店の奥の部屋に通され、サラから事情を聴いていた。
「さっきの事を見ていただければわかると思いますが私達はあの盗賊たちに常に脅されています。私達はあいつらと戦う力を持っていません」
「事情は分かったが俺らに何かしてほしいのか?」
ユーリは机に立膝をつきながらサラに伺った。彼女は下を向きながらガタガタと震えている。おそらく自分たちの不甲斐なさを恥じているのだろうとユーリは思った。
「本当に勝手なことだとは思います。でもどうかあいつ等を・・・」
「報酬だ」