1-2
「チッ。胸糞の悪い街だな。早く情報をを聞いてこんな街出るぞ」
ユーリはイライラしながらジョッキの形の看板が掛けられたお店を見つけた。二人は何も言わずにそのお店に入っていく。
カランカラン
店の玄関を開けると古びた鈴の音が店内に響く、その瞬間恐らく和やかな雰囲気であった空気がガラッと不思議な緊張感が包まれた。店内には5,6人の客とカウンターにはグラスを磨いているマスターがいた。店内にいた全員がユーリ達に向かって殺気じみた視線を送っている。
だが二人はそんな視線をものともせず、ズカズカとカウンターまで歩いていった。
カウンターに近づくとユーリはマスターに向かって写真を見せる。
「おいマスター。この町で白いフードを被った人物が来なかったか?」
ユーリの高圧的な態度にアリューはもう少し穏やかにできないのかと一つ溜息を吐いたユーリの問いにグラスを拭いてたマスターは無言でグラスを拭き続ける。ユーリはそんなマスターの態度に額に血管が浮き出ながらブルブルと写真を震わせていた。
「おい!聞いているのか?」
ユーリはテーブルに拳を叩きつけ、怒りを露わにするがマスターはそんな態度に表情を変えずに答える。
「よそ者に対して教えることなんか一つもないな」
ユーリの額から血管が切れる音が聞こえた。ユーリの手がマスターや他のお客には見えない速度でマスターの胸倉に向かっていく。
胸倉を掴みかけた瞬間、勢いよくお店の玄関が開く、その音に店内にいた全員が玄関を見た。そこには17,8歳ほどの女性が仁王立ちをしていた。女性はまだ子供っぽさを残した容姿にマスターと同じ赤みが入った髪色をしていた。
その女性に対してマスターが何かを言おうとしていたがそのまえに女性の怒号が響く。
「お父さん!せっかくのお客さんなのにどうしてそんな態度になるの?」
女性はズカズカとカウンターまで行き、ユーリ達の頭を下げた。
「本当にうちの父親がすいません!」
ユーリはあまりにも衝撃的な女性の登場に先ほどまでの怒りはどこかへいってしまった。
「おい!エミリこんなよそ者なんかに頭を・・・」
マスターは少し、焦りながら自分の娘に頭を上げろと促すが娘はキッ!と睨み、それ以上マスターには喋らせなかった。
「お父さんは黙ってて!本当にこんな態度ですいません!」
娘に一喝され、マスターは少し寂しそうな顔をしていた。そんな空気の中、アリューは女性の前に出て、頭を上げさせようとする。
「やめて下さい。僕も連れもそんなに怒ってないからそんなに謝らなくてもいいですよ。マスターにもそんなに怒らないでください」
アリューの言葉により、ようやく落ち着きを取り戻したのか、女性は改めて自己紹介を始める。
「すいません。私はこの大衆飲み屋のマスターの娘のサラと言います。あぁ!なにか飲みますか?ここの地域はビールが名産なんですよ」
サラという女性はユーリ達の返答も待たずにカウンターの中に行き、慣れた手つきで目の前にビールの入ったジョッキが二つ並べた。その対応に二人はしょうがなくカウンターに座り、飲み物に手を出した。
マスターはそんな二人を見て、我慢できなくなったのか二人に話掛けた。
「お二人さん。てめえらはテッド団の一員じゃないだろうな」
その問いに対して周りの客と女性に一層の緊張感が生まれた。二人は懐からあるバッチを取り出し、マスターと女性に対し見せつけた。そのバッチには銀色の背景に黒い鳥が鳴いている絵だ。