#1 「二人の男」 1-1
土砂降りの雨が降る中、黒い髪の少年は泣いていた。
少年の目の前で父親が殺されてしまったのだ。
雨の一粒一粒が鮮明に視界に入る。時がゆっくりと進んでいるような気がした。少年は父親の死体をそのままに急いでその場を後にする。
何故なら、自分も命を狙われているからだ。
少年は必死で逃げていく。だがそんな少年の目前に黒髪の青年が立ちふさがる。青年は金色の拳銃を少年に向け、人形のような瞳で少年を見る。そして金色の拳銃から金色の弾が少年に向かって音速の速度で飛んできた。少年は勘に近い反射神経で額に飛んできた弾をギリギリ避け、頬に傷が入る。地面に血が滴る。
少年は自分の傷に構うことなく、掠れた声で呟く。
「・・・兄さん。なんで父さんを・・・」
兄と呼ばれた青年は何も答えることなく、無表情で金色の拳銃を構えたままだった。
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周りには荒野が広がっており、道なき道を一台の黒いワンボックスカーが走っていく。車は砂煙を上げ、中には男が二人乗っていた。
一人はメガネを掛け、栗色の髪に燕尾服を着た青年が笑みを浮かべ、ハンドルを握る。隣には黒い髪で黒いトレンチコートを着た男が足を上げ、ぐっすりと寝ていた。
車は大きな石を踏んだのか車体が大きくずれた。
その衝撃により、助手席で寝ていた黒髪の男が勢いよく跳ね起きる。呼吸が乱れ、額には脂汗が滴り落ちる。
「おやおや。騒がしい寝起きですね、ユーリさん。悪夢でも見ていましたか?」
隣で運転していたメガネの男が笑みを浮かべながらユーリと言われた、黒髪の男に話しかける。ユーリは後部座席にあるタオルを取り、寝汗を掻いてしまった顔を拭きながら、ゆっくりと呼吸を整えながら答えた。
「・・・あぁ。思い出したくもない夢をな・・・」
ユーリはタオルを頭にかけ、腰のホルスターから銀色の拳銃を取り出し、拳銃の整備を始め、ジッと拳銃を眺める。あの夢で向けられていた拳銃と瓜二つの銀色の銃、ユーリは少し悲しい顔を浮かべていた。
「まぁ大丈夫だよアリュー。だがその運転はどんなに熟睡してても起きるよ」
「そんな事言われても僕も頑張っていますよ。でも安心してください。そろそろカレスの街に着きますよ」
アリューはユーリから再び前方を見ると少しばかりスピードを上げる。整備されてない道なので道路の凸凹の衝撃が直にユーリ達に伝わってくる。
「はぁ。なんでこんな所に街を作るのかが分からんな」
ユーリは自分のお尻を撫でながら、アリューに対して半ば切れ気味で問いかける。
「ハハハ。僕だって分かりませんよ」
二人はまだ見ぬ街に対して愚痴を話しているといつの間にかカレスの街の入り口にたどり着いた。
車を目立たない所に停め、ユーリは黒のトレンチコートを羽織い、カレスの街の入り口に近づく。
街はとても閑散としていて、閑古鳥が鳴いているようだった。だが二人には並んでいる家々からくる、不審な視線は感じていた。
アリューは歩きながら、笑みを崩さずに話した。
「この街は外からの人間に対して非常に毛嫌いしていますね」