この後の話・Ⅲ
ネタバレ注意。これで最後です。
「この後の話・Ⅱ」まで
↓
リリーとは、“彼”の双子の片割れである。
ここからは“彼”が記憶を失うまでの話になる。
“彼”の名は一貫して伏字で“××××”と表記される。
↓
二人(リリーと“彼”)とその両親は
非常に仲の良い、裕福な家族だった。
“彼”がリリーに花冠を作ってあげると、
リリーはいつも大いに喜んだ。
→前24、花畑で“彼”が無意識に作ったもの
両親は駆け落ち婚で、母親は白百合家出身。
長らく平和な日々が続いたが、
それは突如として終わりを告げる
↓
この母親の居場所を押さえた追っ手が
突然押し掛けてきて家を襲撃、父親を殺し、
“彼”(このとき8歳)を拉致していく
当時、白百合家には子世代に男子がいなかった。
↓(要するに双子の物語でよくある“生き別れ”)
母親とリリーも実家に呼び出され、
(駆け落ち時の相手とは破談になったので)
また別の相手と結婚させられることとなる。
母親の新たな相手は比較的感じのいい人だったが
リリーは“彼”に会えないことで悲しみを募らせる。
情緒が不安定になったせいか、“術”で抑えていた
彼女の“病気”が頻繁に現れるようになる。
↓(“病気”とは)
結論から言うと“二重人格”である。
リリーはかなり小さい頃(2~3歳頃)に占い師から
“貴女の中に二つの魂が宿っている”と宣告される。
比較的簡単な“術”で眠らせておくことができ、
“彼”の前以外では基本的に抑えていた
太陽のように明るくハキハキしたリリーに対し、
“彼女”は月のように寡黙でおとなしい性格だった。
二重人格とはいえ、
“彼女”がリリーと入れ替わることはまずなく、
あくまで心の中でリリーに語りかけるのみ。
その気になれば入れ替われるようだが…。
しかし、リリーが“彼女”と会話するには
声に出さなければならず、
周りから見ればそれは独り言ばかりになるため
普段は眠らせている、というわけである。
なお、“彼”は“彼女”のことも受け入れていた。
↓(まぁだいたい分かったところで)
そんなリリーと“彼”は年に一度、
誕生日の日だけ会うことが許された。
それぞれの家が離れているため、
厳密には二泊三日(前日から来る)。
それは二人にとってこの上ない希望の日だった。
しかし、12歳の誕生日を控えた前日の夕方、
“彼”の様子が明らかにおかしかった。
リリーが話しかけても大して反応せず、
背中を向けてばかりだった。
屋敷の一室で二人きり、
リリーは“彼”に話しかけ続けた。
すると突然、顔色を変えた“彼”が振り向き
別人のような形相でリリーを睨みつけ、
壁に追い詰めて右手を振り上げた。
その手に握られていた刃はただの刃ではなく、
一家の中でも選ばれた者だけが持ち合わせる
秘術によるものだった。
しかし片割れのリリーには
それを制御するための能力があった。
その力を発動させた瞬間、“彼”の手にあった刃は
バラバラに砕け、消え去った。
同時に正気に戻った“彼”は大粒の涙を流し、
リリーを残して何も言わずに部屋を後にする。
↓(そしてその夜。全体的に前8も参照)
夕食後“彼”を見かけなかったリリーは心配になり、
しばらく寝ていたが ふと目が覚め、
“彼”の部屋を訪れる。するとそこには……
首元を切って倒れている“彼”がいた。
その手には例の刃が握られており、
血がベットリとついていた。→前8、24。首の傷痕
リリーが追いすがって泣きじゃくり、それによって
他の家族にも発見される。自殺だと考えられた。
しかし、“彼女”は伯父(リリーの母親の兄で当主)の
冷めた瞳から、伯父が深く関わっていると見る。
実際、伯父はリリーと“彼”を引き裂いた
張本人であった。
↓
葬儀は翌朝から行われ、
“彼”の遺体はとっとと埋められてしまった。
まるで初めから何もかも用意されていたかのようで
“彼女”だけでなくリリーも疑念をもつ。
まず、“彼女”が自殺でないと見た理由として
死んだ“彼”を発見したとき
・周りに血がほとんど飛び散っていなかった
・服が多少乱れていた
・はだけて露出した腕や脚からアザが見えた
“彼女”は入れ替わらない限り
リリーの目に映るものしか見えないが、
その範囲内で、リリーとは異なる“焦点”で
物を見ることができる。
↓(その夜、誕生会は静かに行われた)
真夜中になって、リリーはまた目を覚ました。
一階に降りると誰もおらず、しばらく徘徊する。
するとある場所で物音が聞こえ、そちらに近づくと
隠し扉が開き、階段が地下へと続いていた。
嫌な予感がして、リリーは階段を降りて
地下室の扉を開ける。
↓(すると)
伯父の手で両親が殺されていた。
伯父はリリーに、“彼”も殺したと告白する。
それは厳しいしつけでも嫌悪からでもなく、
異常な性的倒錯によるものだった。
幻聴で“彼”の断末魔の叫び声が聞こえ、
それがリリーの殺る気スイッチを入れる。
激昂したリリーは伯父からナイフを奪い取り
原型を留めないほどに切りつける。
リリーは狂ったように笑いながら、
屋敷を飛び出して雨の中を駆け抜けた。
↓(“ように”というか本当に気が触れたのかも)
墓場にて、“彼”が埋められた場所にひざまずき、
やっとリリーも正気に戻った(…のか?)。
いわゆる100倍返し(物理)を果たしたため
当然ながら血まみれになっていた
全てを失い絶望したリリーは、
ナイフの刃先を自分に向けた。
“彼女”も止めなかった
↓(そこに)
「やあ、白百合のお嬢さん」背後から見知らぬ声
↓(この日は1595年6月6日。→後3)
もはや怨霊と化したレイモンド登場。
亡霊は強く念じれば、子供の前になら姿を現せる。
リリーとは初対面だが、金髪碧眼という容姿と
その雰囲気から白百合家の人間だと分かる。
レイモンドは大きな魔術ではただ一つ、
蘇生術の方法を覚えていた。→後2
でも試したことがなかった(当たり前だが)。
なので、一連の事情を話したリリーに、
“彼”を蘇らせてあげるから
復讐に協力してくれないか、と持ちかける。
リリーは即答でOKする。
“彼女”はレイモンドに会ってからは沈黙している
↓
気配を消す魔術により屋敷に潜入、服を着替え、
地下のある場所から“碧の秘薬”を持ち出して
二人はロブが眠る部屋の前まで来る。
このときロブは風邪をこじらせて寝込んでおり、
この手でとどめを刺そうという作戦だった。
亡霊のレイモンドは壁をすり抜けられるため、
死んでから二年で地下の構造を完璧に覚えていた。
よって、あらゆる場所を最短ルートで導けた
→部屋の前に至るまでに、
当主とエイミーの会話が聞こえてくる。
前12、ロブが耳を塞いだ幻聴
→これに加え、会話の中で“シャノン”という人物が
ロブと関連づけられている。
なお、シャノンというのは苗字。
↓(が、とんでもないハプニング発生)
気付かれぬようにドアを開けると、
やけに静かだった。
レイモンドが小さめの火で周りを灯すと…
ロブは血を吐いて、ベッドから転がり落ちていた。
発作を起こして、息絶えたばかりだった。
→所詮は病弱なレイモンドの身体である。
それがかつての自分の惨めな姿と重なり、
レイモンドは目を背けようとした。が…
ロブの目から流れていた一筋の涙に気づく
↓
根拠はないけどレイモンドは確信した。
“こいつは殺人鬼ではない”
その瞬間、復讐を企てたことを後悔した。
しかしまだ実行していない。まだ間に合う。
リリーに計画中止を伝えようとしたが
↓も う 手 遅 れ だ っ た
“復讐したら片割れが戻ってくる”と言われ
そればかりで舞い上がっていたリリーは、
レイモンドに見向きもせずロブに薬を流し込んだ。
このとき“彼女”も、やめるように言っていたが…。
このとき、リリーを阻止しようと
レイモンドが後ろから抱きついた。
彼はまともに前が見れないほど泣いていた。
亡霊は強く念じれば、子供になら干渉できる。
薬は速効性だが、すぐには何も起こらなかった。
しかし…
↓(前28、ロブが子供に語った思い出)
あろうことか、ロブは息を吹き返した。
リリーと目が合い、見知らぬ相手に驚くが
自分が一度死に、生き返ったことを悟り
リリーを命の恩人だと思い感謝を述べる。
開いた口が塞がらないレイモンドは
早く引き上げようとリリーに働きかけ、
リリーは慌てて退散する。
↓(そして再び墓場へ)
リリーは土に指で“彼”の名前と誕生日、
そして墓場からクレメンス家の屋敷への経路を
書いた(なぜ経路まで書いたかは不明)。
これを、術を準備中のレイモンドは見ていない。
ちなみに“名前”は、後に雨で流されて消える。
蘇生術は、実行者と“仲介者”によって成立する。
この場合生きているリリーが実行者だが、
実行者は代償として魂が消滅する。
リリーにとっては、“彼”が生き返るのなら
そんなこと どうでも良かった。
仲介者となるレイモンドは何も失わないが、
先程のことがあり本当は術を使いたくなかった。
しかしリリーが早く生き返らせろと
ヒステリックに詰め寄るので断れなかった。
リリーはもはや“彼女”の諫める声も聞いてない。
レイモンドの示した通りに、
リリーは呪文を唱えた。
↓
リリーと“彼女”は、全く別々の魂である。
蘇生術で消えるのは、この場合は一つの魂だけ。
(身体の腐敗が進むほど犠牲が増える)
↓(以下、精神世界的な)
“彼”は不本意な死に方こそしたものの、
生き返りたいとは特に思っていなかった。
今はただ流れに身を任せよう、
そんなときに蘇生術を使われたのだ。
“彼”は最後の力を解き放ち、
リリーを制することで術の失敗を誘おうと試みた。
しかし、半ば気の触れたリリーの想い(執着)と
レイモンドの力を借りた 術の強大な力の前には
未練の薄い魂は無力だった。それどころか、
その力が術に取り込まれ成功を導いてしまった。
“彼”の魂は身体に舞い戻り、
それを見送ったリリーの魂は砕け散った。
“彼女”はそれらを眺めることしかできなかった
↓
リリーのいた場所に“彼”が横たわり、
“彼”の眠っていた棺桶にリリーが収まった。
→前15、棺桶が発掘され、
推測ではあるもののリリーだと見なされる。
その後 そこには墓標が立つが、
そこに刻まれた没年は発見された年である。
残された“彼女”の魂は、レイモンドと顔を合わす。
“彼”の姿を確認すると、二人はその場を去った。
以後、現在に至るまで行動を共にしている。
→後3、最後の一文より
そして、前編第1話から物語が始まる。
日付が7日に変わった夜明けに、“彼”は目覚めた。
蘇生術は生き返った者からも様々なものを奪う。
共通のこととして、自身の記憶全てが失われ、
他人の記憶からも存在が完全に消されてしまう。
他にも“何か”が幾つか失われる。“彼”の場合、
・秘術はもちろん、魔力全般を使うための本能
・己の美貌を知るすべ(=鏡に姿が映らなくなった)
何が失われるかは術が成功するまで分からないが、
リリーはこのことも承知の上で術を使った。
この“彼”はハル、“彼女”はセーベルという名で
後に主従の関係で“再会”することとなる。
セーベル曰く、人柄は全然変わっていないらしい。
彼女はリリーの中にいた頃から、彼に対して
恋心に近い感情をほんのり持っている。
これが続編の彼女の設定に深く影響してきたり。
でもあくまで、優先順位一位はリーゼルである。
↓(そして200年後。ここからすごく曖昧な構想)
三兄妹は長年の尽力の末、
屋敷跡の亡霊を全員成仏させ、
誰でも呪われることなく入れるようにした。
↓(しかし…)
今回のフィオナの駆け落ち作戦の数ヶ月前
(このとき駆け落ちの計画は始まっている)、
三兄妹は突然姿を消した。
また、研究資料と薬品が全てなくなっていた。
(屋敷跡の近くに何かを燃やした痕が残っている)
人間として生まれてから200年近く。
彼らは開き直り、人間であることを辞めたのだ。
最低限の資料と薬品、そして例の骨を持って
どこかへと旅立っていった。
三人の理由や目的は分からない
(実はまだ構想してない)が、
リーゼルやセーベルじゃないと知り得ないことや
もしかすると二人も知らないような真実を
掴んだのかもしれない。
少なくとも、開き直った“化け物”の彼らは
今までできなかったことができるようになっている
(年が止まった時点でできるようになっていたが
今まで気づかなかった)ため、
(現時点の構想では)何があってもおかしくない。
なお、リーゼルはこれまでの話のどこかで
自身の死体(骨)の存在に気づいている。
三人がそれに何かしら執着しているのにも
うっすら気づいていたので、
その死体を使って何か良からぬことを
しでかすのではないかと真っ先に考えた。
→下界をさまよう魂しか取り込めないので、
“蘇らせること”目的の蘇生術は不可能。しかし
術で莫大なエネルギーを発生させることができる
もはやその身体が自分のものかロブのものかは
置いといて、いずれにせよ土に還すべきである。
200年前の自身や親の過ちもあり、
自分の身体に手がつけられることは許せなかった。
なお、フィオナはロイド家の令嬢、
その彼はエイリー家の御曹司である。
リーゼルとセーベルもある意味開き直り、
この二人を利用した側面がある。
主従の指輪を託したのもこのためである。
リーゼルは墓前で座りこむセーベルに傘をかざす。
背中が濡れ、シャツ越しに傷痕が透ける。→後2
墓に花を添え、二人はフィオナたちの後を追った。
↓(小説ではここまでで終わり。以下、続編)
二人はこの夫婦の間に生まれた娘の従者となり、
他のいろいろな物事が交錯しながらも
三兄妹の計画を阻止するべく立ち上がる。
この娘は奇跡にも、二人が待ち望んだ
白百合家の“秘術”を受け継ぐ者だった。
ここでセーベルが“秘術”の指南役となる。
一方、リーゼルは三兄妹の不老不死の仕組みと
それを解く方法について薄々気づいているが、
その手段だけは絶対に使いたくないので
どうにか別の方法はないかと探し始める。
(2016.3.28 暫定)
…お疲れさまでした。
これが構想のほぼ全てです。
正しくは“作品として表面に現れる部分”のみで
裏に潜んでいる真実や設定は省いています。
よければ考えてみてくださいな。
続編と書いてますが……
こちらは最初から小説にはしないつもりで、
別の媒体を想定して構想しておりました。
しかしこれも今のままだと頓挫しそうです。
奇跡が起きたら戻ってきます。
駄目だったらそのままです。
では、今までありがとうございましたm(._.)m