6話 巡回兵の怒り
魔王城の内装はダンジョンというより人間の王族などが住む城に近い、通路には赤い絨毯が敷かれ、壁には絵画が埋め込まれてあったりとても豪華だ。他にも様々な物が壁沿いには飾られている。ただ、魔王城の特徴として住んでいる魔物が比較的人間よりも大柄な魔物が多く、またその数も多いため人間の城よりも内装、外装ともにかなり大きく広い造りとなってる。
そんな広い城の通路のとある所にてウィルはその赤い目をまるで磨き上げたルビーのようにキラキラと輝かせ壁沿いに置かれている物を夢中になって眺めていた。
「かっこいいなぁー。僕もいつか着てみたいなー。」
ウィルの前には、王族の近衛兵が装備するような立派な白銀の鎧と剣があった。ウィルはこれまで家にある絵本の中でしか見たことがなかったため興奮していた。
ウィルが眺めだして、十数秒ほどたったころ。突然鎧の目のスリットに紅い球体の光が1つ灯った。
と同時にウィル目掛けて剣が勢いよく降り下ろされる。
眺めることに夢中で無警戒だったウィルだったがそれをすぐに反応し咄嗟に後ろへ飛び退く。
「ぬ・・。なかなか素早いな小僧。通路の遠くで歩いてくるお前を確認したから、近付いてくるまで待ち、来たところで切り捨てようと思ったが、よく私の攻撃を避けきったな。」
「えっ!?鎧がしゃべった!!」
今まで眺めていた鎧が動き、さらには話しだしたことに驚くウィルに対し相手は極めて冷静に言葉を繋ぐ。
「私はデュラハンだ。ただの鎧ではない。それよりも人間のお前がこんなところをフラフラ歩いてるのが見つかったら厄介なんでな、殺させてもらうぞ。」
そういって話は終わりだとばかりに殺気を漂わせる。このデュラハン、門番のトロールとは違い甘くはない。はじめから捕まえて逃すといった考えなどは毛頭になかった。
「まだ見てみたいところたくさんあるし、殺されるのはヤダ。」
一方ウィルは殺気にあてられることなく、いつも通りの調子でそう一言答えたと同時にデュラハンに背を向けて脱兎の如く逃走した。
てっきり戦闘を期待していたデュラハンはウィルの行動に今度は逆に驚かされる。しかし、その一瞬の隙に既にウィルとデュラハンの距離は開いていた。
「おい待て!逃げるな!!─────私と戦えぇぇぇーー!!!!」
後には、デュラハンの怒声が広い通路に哀しく響くのみであった。