2話 追いかけっこ
はじまりの村からしばらく離れたある林の中。一匹のメタルスライムがまるで天敵から逃げるように狭い林の中を必死に駆けていた。逃げども逃げども追いかけてくる敵に対し、徐々に焦りと恐怖が募っていく。
(あと少し・・!あと少しだけ行けば住処へ帰れるんだ・・!)
その一縷の望みに全てを託し、限界の近い体に鞭をうち、さらに一段階速度を上げていく。
暫くして林を抜けるとメタルスライムの視界に住処の入り口である抜け穴が見えた。
メタルスライムは最後の力を振り絞りその抜け穴目掛け突進し、入った瞬間に力尽き倒れ込んだ。
ゼェハァ・・!ゼェハァ・・!
(ここまで来れば安心だ人間にここの入り口は見えないし、ましてや通り抜けられるはずもない――!俺は生き残れたんだ!)
敵から逃げる死の追いかけっこを制ししばし
生きてる実感を噛み締めた。
・・・ズ・・ル・・・・ズ・・ル・・・・
・・ズ・・ル・・ズ・・ル・・・
しかし、束の間の安寧はすぐに絶たれつつあった。
背後から何かが擦れる音を感じ、メタルスライムは視線だけを抜け穴に向けた。
(ッッ!?!!)
――――――そこには、今にも抜け穴からこちらへ
抜け出してこようとする アイツの頭が見えていた―――。
(なんでだ!?なんで人間がここに入れる!??そもそも魔物以外には入り口は見えず草原が広がってる風に見えるはずだぞ!?)
恐怖に駆られたメタルスライムは既に満身創痍だった体をもう一度奮い立たせその場から一目散に逃げ出した。