1話 はじまりの村と赤い目の少年
「よーし!今日もスライム狩りだー!」
村の外れの古小屋から幼い子どもの元気な声が聞こえてきた。古小屋から出た少年は小さな剣と皮の防具を装備して村を出ようとしている。
古小屋からでた10歳くらいの少年の髪は朝日に照らされて白く輝いていた。正確には白に近い銀髪である。身長は村の子どもたちとほとんど変わらない、成人の男と並ぶと胸の辺りに少年の頭がくるぐらいだろうか。体格はやや細身であるが、ほぼ毎日装備をつけてスライムを追っているので貧弱な印象は受けない。
むしろ、印象的な特徴は少年の瞳である。
―――――――――――少年の瞳は赤色だった。
赤い目は魔族に多くみられる特徴であり、そのため人間が赤い目を持って生まれることはそれだけで周囲に忌避される傾向にある。
この村でもそれは例外ではなく、赤い目の少年『ウィル』が村外れの小さな古小屋に住んでいるのはそういった経緯があった。
「今日は、何匹捕まえられるかなー♪」
当の本人がそれほど気にしていないのが幸いである。
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少年ウィルが住んでいるこの村は、現勇者パーティーの出身地でもあり、ここから魔王討伐の旅が始まったことから『はじまりの村』と呼ばれている。
村は海に面していて、漁業が盛んであり周囲に強いモンスターもいないため平和でほのぼのとした様子が村人たちの表情からもわかる。
強いモンスターはいないといっても村から出て少し歩けばモンスターが現れるため、武器屋・防具屋・道具屋・宿屋など一般的な店並みは村にもある。
なお、この村は美味しい海の幸が食べられ、宿屋のテラスから透き通った海を一望できるオーシャンビューが人気で、はじまりの村は観光スポットとしても有名である。
「しゅっぱーつ!」
――――――この物語はそんな村で育ったこの元気な少年の冒険譚――――――